9月の資金ショートは8月中に見える。確かめる3つの数字

内藤明亜事務所の才藤です。

9月末に資金が足りるかどうかは、8月下旬の時点でほぼ見えています。9月に入ってから慌てるのではなく、いま3つの数字を確かめてください。

確かめるのは、手元流動性・13週の入出金・固定費の月額です。この3つだけで、動ける時間がどれだけ残っているかが分かります。

目次

  1. 結論:8月下旬に確かめる3つの数字
  2. 手元流動性とは
  3. なぜ9月なのか
  4. 数字1:手元流動性を月数で出す
  5. 数字2:13週資金繰り表に引き直す
  6. 数字3:固定費の月額を1枚にする
  7. 足りないと分かったときの選択肢
  8. よくあるご質問
  9. まとめ

お盆の間、通帳を見るのが少し怖かった。そういう話を、この時期によくお聞きします。

1.結論:8月下旬に確かめる3つの数字

先に結論を書きます。8月中に出しておく数字は、次の3つです。

# 確かめる数字 出し方 注意したい水準
1 手元流動性(月数) 現預金 ÷ 月あたりの固定費 3か月を切っている
2 13週の入出金 週ごとに入金と出金を並べる 残高がマイナスになる週がある
3 固定費の月額 人件費・家賃・リース・返済の合計 直近3か月で増えている

どれも、決算書を見なくても出せます。必要なのは通帳と、支払予定のメモだけです。

この3つを出したうえで、9月末の残高がマイナスになる週があるかどうか。それが判断の分かれ目になります。

2.手元流動性とは

手元流動性とは、いま手元にある現預金が、毎月出ていくお金の何か月分にあたるかを示す指標です。

計算式は「現預金 ÷ 月あたりの固定費」。売上がゼロになったと仮定して、何か月もつかを見る数字だと考えてください。

利益が出ているかどうかとは別の指標です。黒字でも手元流動性が1か月を切れば、支払いは止まります。

3.なぜ9月なのか

8月から9月にかけては、中小企業の資金繰りが構造的に厳しくなる時期です。理由は3つあります。

3-1.8月の入金が細り、9月の支払いは減らない

お盆で取引先の経理が止まると、8月の入金は後ろにずれます。一方で、給与・家賃・社会保険料・借入返済は同じ日に出ていきます。

この「入りだけが遅れる」構造が、8月末から9月にかけての残高を削ります。

3-2.9月は決算・中間期が重なる

9月は中間期末にあたる会社が多く、取引先の支払条件が見直されやすい時期です。サイトが1か月延びるだけで、月商1か月分の資金が要ります。

3-3.秋以降の資金需要が立ち上がる

東京商工リサーチは、2026年7月の倒産集計(2026年8月10日発表)で「これから資金需要が活発になる時期を迎え、企業倒産は増勢を強める可能性が高い」と指摘しています。

同社の集計では、2026年1-7月の倒産件数は6,374件。前年同期比7.1%増でした。

3-4.金利の前提が変わっている

日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度へ引き上げました。7月31日の会合では据え置いています。

変動金利で借りている場合、返済額の見直し時期に入ると月々の返済が変わります。9月の資金繰りを組むときは、いまの金利で計算し直すことをおすすめします。

4.数字1:手元流動性を月数で出す

まず、通帳の残高を全口座分足します。定期預金も含めて構いません。

次に、月あたりの固定費で割ります。出てきた数字が手元流動性の月数です。

手元流動性 状態の目安 この段階でできること
6か月以上 余裕がある 条件のよい借換えを検討できる
3〜6か月 まだ選べる 金融機関との条件変更、支援制度の申込みが間に合う
1〜3か月 時間が限られる 専門家を交えた計画づくりに入る段階
1か月未満 選択肢が狭い その週のうちに相談先を決める

この表を見て、下の2行に自社が入っていたとしても、それは終わりを意味しません。ただ、使える手続きの数が減っていくことは事実です。

まだ相談する段階じゃない、と思っていませんか。

5.数字2:13週資金繰り表に引き直す

月次の資金繰り表では、月の途中で起きるショートが見えません。週ごとに並べ直します。

作り方

  • 横軸を週にする。8月第4週から11月第3週までの13週分
  • 入金は、確定しているものだけを書く。見込みは別の行に分ける
  • 出金は、給与・社会保険料・家賃・リース・借入返済・仕入・税金の順に並べる
  • 各週の末残高を計算する

ポイントは、見込みの入金を残高に足さないことです。足した瞬間に、この表は使えなくなります。

見るところ

残高がマイナスになる週があれば、その週が期限です。何週間後かを数えてください。

4週以内なら、動ける手段はかなり絞られます。8週あれば、金融機関との交渉も、制度の申込みも間に合うことが多いです。

6.数字3:固定費の月額を1枚にする

3つめは固定費です。人件費、家賃、リース料、借入返済、水道光熱費、保険料を1枚に書き出します。

ここで見るのは金額だけではありません。直近3か月で増えた項目に印を付けてください。

2026年7月の倒産では、人件費に関する動きが目立ちました。東京商工リサーチの集計では、人手不足関連倒産のうち「人件費高騰」を理由とするものが36件。前年同月の17件から2.1倍に増えています。

人が採れないことより、今いる人に払い続けられるかどうかが問われる局面に入っています。

7.足りないと分かったときの選択肢

13週の表でマイナスの週が出たとき、取れる道は大きく3つに分かれます。

7-1.資金を入れる

国の資金繰り支援制度があります。中小企業庁の「資金繰り支援のご案内」(令和8年4月時点版)に掲載されている主なものを挙げます。

制度 概要
セーフティネット貸付 日本政策金融公庫による融資制度
セーフティネット保証5号 業況の悪化している業種向け。通常の保証限度額とは別枠で80%保証
経営改善サポート保証 再生計画にもとづく借入を保証。保証額は最大2億8,000万円
モニタリング強化型特別保証 2027年3月末までの申込分。顧問税理士等と毎月の資金繰りを確認することで、国が保証料の2分の1相当を補助

要件や指定業種は改定されます。申込みの前に、信用保証協会と市区町村の窓口で最新の内容をご確認ください。

7-2.出ていくお金を止める

既存の借入について、金融機関に返済条件の変更を申し入れる方法があります。

申し入れの際は、13週資金繰り表と、その先の見通しを持参します。数字がないまま「待ってほしい」とだけ伝えても、話が前に進みません。

7-3.事業の形を変える

採算の合わない部門を止める、拠点を減らす、といった判断です。

この判断は、手元流動性が3か月を切ってからでは間に合わないことがあります。止めるにも資金が要るからです。

8.よくあるご質問

Q1.手元流動性は何か月あれば安心ですか。

業種や取引条件によって変わるため、一律の基準はありません。ひとつの目安として、3か月を切ったら計画づくりに入る時期だとお考えください。売掛金の回収が月末に集中する業種では、より厚めに見る必要があります。

Q2.13週資金繰り表は、会計ソフトがないと作れませんか。

表計算ソフトで十分です。列に週、行に入金と出金の項目を並べるだけで作れます。大切なのは精度より、毎週同じ形で更新し続けることです。

Q3.銀行に相談すると、かえって印象が悪くなりませんか。

数字を持たずに相談に行った場合は、そう受け取られることがあります。逆に、13週の見通しと改善の手順を示せる状態であれば、話し合いの材料になります。相談の順番と持ち物で結果は変わります。

Q4.社会保険料や税金を滞納しています。まだ間に合いますか。

滞納があるからといって、道が閉ざされるわけではありません。ただ、放置した期間が長いほど選べる手段は減ります。督促の段階で、猶予の制度が使えるかどうかを含めて早めにご相談ください。

Q5.どの段階で専門家に相談すればよいですか。

13週資金繰り表でマイナスの週が見えた時点です。実際にショートしてからではなく、見えた時点で動くほうが選べる手続きが多く残ります。内藤明亜事務所では、手続きを決める前の段階からご相談をお受けし、倒産処理に精通した弁護士をご紹介して、その前後をお支えします。

9.まとめ

  • 9月末の資金繰りは、8月下旬の3つの数字でほぼ見える
  • 手元流動性は「現預金 ÷ 月あたりの固定費」。3か月が一つの節目
  • 13週資金繰り表に引き直す。見込みの入金は残高に足さない
  • 固定費は金額より「直近3か月で増えた項目」を見る
  • マイナスの週が見えた時点が、相談を始める時期

資金繰りの数字を出すのは、気の重い作業です。見なければ、しばらくは平気でいられます。

それでも、8月のうちに出しておけば、9月に取れる手がまだ複数あります。順番が逆になると、選べる道が減っていきます。

出典

  • 東京商工リサーチ 全国企業倒産状況「2026年7月の全国企業倒産1,028件」2026年8月10日発表
  • 日本銀行 金融政策決定会合(2026年6月16日決定・2026年7月31日据え置き)
  • 中小企業庁「資金繰り支援のご案内」令和8年4月時点版

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