税理士に頼める仕事は法律上3つ。会社の存続判断は入らない

内藤明亜事務所の才藤です。

「うちの税理士に聞いても、はっきりした返事がありません」という声をよく伺います。

税理士が法律で担っている仕事は3つあり、会社を続けるかどうかの判断はそこに含まれていません。

この記事では、根拠となる条文を確かめたうえで、誰に何を聞けるのかを整理します。

この記事は、顧問税理士との会話が噛み合わないと感じている方に向けて書いています。相手を替える話ではありません。どこまでが税理士の仕事なのかを知っておくための整理です。

1.結論

先に答えを書きます。

税理士が答えにくいのは、力量の問題ではなく、担当している範囲の問題です。

税理士法が定める独占業務は、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つです。

この3つは、いずれも「税金をどう申告し、どう納めるか」に関わる仕事です。

会社を続けるか畳むかは、税金の計算ではありません。ですから範囲の外に出ます。

範囲の外にあるものを求めても、返ってくるのは言葉を選んだ返事になります。

  • 税理士の独占業務は税理士法第2条第1項の3つ(税務代理/税務書類の作成/税務相談)
  • 存続の判断、資金繰りの組み替え、手続きの選択は、その3つのどれにも当てはまらない
  • ただし税理士は、判断に要る資料をいちばん早く出せる立場にいる

2.税理士の独占業務とは

税理士の独占業務とは、税理士法第2条第1項が定める、税理士だけが業として行える3つの仕事をいいます。

条文の順に、中身を並べます。

条文 業務 中身
第2条第1項第1号 税務代理 税務署などに対する申告や申請、調査の立ち会いを本人に代わって行うこと
第2条第1項第2号 税務書類の作成 申告書、申請書、届出書などを作って提出すること
第2条第1項第3号 税務相談 課税標準の計算などについて、具体的な質問に答え、意見を述べること

出典:国税庁「税理士制度」/税理士法基本通達 第2条《税理士業務》関係

この3つは、税理士以外がやると法に触れます。無償であっても同じ扱いです。

「業とする」とは反復継続して行うことをいい、有償かどうかは問われません。

裏を返せば、3つの外側は、税理士でなければできない仕事ではないということです。

ここで、ひとつ前提を崩しておきます。

顧問税理士は会社の数字を全部わかっている、と考えている方が多くいらっしゃいます。

税理士が見ているのは、申告に必要な範囲の数字です。来月の入金と支払いの並びまでは、通常は見ていません。

全国の税理士登録者数は8万2,310人(日本税理士会連合会・2026年7月末現在)。人数の問題でもありません。制度の設計がそうなっています。

3.誰に何を聞けるのかの地図

相談先を、根拠となる法律ごとに分けて並べます。

相手 根拠 聞けること
税理士 税理士法第2条 申告と納税、滞納している税額の把握、決算書と申告書の中身
弁護士 弁護士法第72条 法律事務の全般。破産や民事再生など裁判所を使う手続きの選択
中小企業診断士 中小企業支援法(名称独占) 事業計画の組み立て、収益構造の見直し
公的な支援窓口 中小企業活性化協議会、事業承継・引継ぎ支援センター、よろず支援拠点など 再生や引継ぎの入口の相談。都道府県ごとに設置

※ 弁護士法第72条は、報酬を得る目的で法律事務を扱うことを弁護士以外に認めていません。手続きの選択が絡む場面では、この線引きが効いてきます。

この表を見ると、ひとつわかることがあります。

「会社を続けるか」という問いを、そのまま受け止める役割の人が、制度上どこにもいないのです。

税理士は税の範囲で答え、弁護士は手続きの範囲で答えます。

その手前にある「そもそもどうするか」は、誰かが引き受けないと宙に浮いたままになります。

経営者がひとりで抱えたままになるのは、性格の問題ではありません。受け皿が制度の隙間に落ちているからです。

3-1.順番を間違えると、選べる手が減る

相談の順番でよくあるのは、税理士に聞いて、そのまま数か月が過ぎる流れです。

税理士は税の範囲で誠実に答えます。その答えは正しいのですが、資金繰りの時計は別に進んでいます。

手続きの選択肢は、手元の資金が一定額を割ると実際に狭まります。

ですから、税理士に聞いた時点で、並行して資金繰りの見通しを別に確かめておくほうが安全です。

順番を守る話ではなく、二本を同時に走らせる話だと考えてください。

4.ケース別の考え方

4-1.「畳んだほうがいいですか」と聞いてしまったとき

この問いに、税理士が明確に答えることはあまりありません。

理由は二つあります。ひとつは、それが税務の判断ではないこと。

もうひとつは、答えた内容が後で責任として跳ね返る立場にあることです。

顧問契約は申告を軸にしています。存続の助言まで含む契約は、通常は結ばれていません。

ですから、返事が曖昧に感じられても、相手が逃げているとは限りません。

4-2.聞き方を変えると答えが返ってくる

問いを税務の言葉に翻訳すると、税理士は具体的に答えられます。

「畳んだほうがいいですか」ではなく、「いま滞納している税と社会保険はいくらですか」と聞きます。

「役員借入金はいくら残っていますか」「繰越欠損金はいくらありますか」も同じです。

どれも税務書類の中にある数字です。あなたが判断するための材料になります。

「まだ相談する段階じゃない」と思っていませんか。

顧問税理士に言いづらいまま、月日だけが過ぎている方は少なくありません。その間に、選べたはずの手続きが一つ、また一つと閉じていきます。

相談したからといって、倒産することにはなりません。いまの契約関係を変える必要もありません。

4-3.税理士との関係は切らないほうがよい

相談先を探し始めると、顧問契約を解除しようとする方がいます。

これは急がないほうがよい判断です。申告が止まると、滞納の状況がわからなくなります。

手続きを検討する場面では、直近の申告内容が土台の資料になります。

役割が違うことと、関係を切ることは別の話です。

5.税理士に頼むと効く書類3点

判断の材料として、次の3つを頼んでみてください。いずれも税務書類の範囲です。

頼むもの そこから読めること
直近3期の申告書一式(勘定科目内訳明細書を含む) 借入先ごとの残高、買掛金と未払金の相手先、役員貸付・借入の動き
滞納している税と社会保険料の残高一覧 分納の可否、差押えが視野に入る時期、優先して払う順番
今期の試算表(直近月まで) 粗利の推移、固定費の水準、赤字が出始めた月

※ この3点が揃うと、続ける道と畳む道の両方を、同じ土俵で比べられるようになります。

そろえるのに一週間もかかりません。多くは事務所の手元にあります。

この3点を持って来ていただければ、わたしどもでも状況の整理から始められます。

よくある質問

Q1. 税理士に廃業の相談をするのは、筋違いなのでしょうか。

筋違いではありません。ただ、答えられる範囲が税務に限られる、と知っておくほうが話は進みます。税額と滞納の状況を聞き、判断そのものは別の場で行う。この分け方が現実的です。

Q2. 顧問税理士に知られたくありません。それでも相談できますか。

できます。ご相談の内容を顧問税理士へお伝えすることはありません。手元にある資料だけでお聞きします。何を伝えるかは、状況が整理できてからご本人が決めることです。

Q3. 税理士に「まだ大丈夫」と言われました。そのまま信じてよいですか。

その言葉が指しているのは、多くの場合、申告や納税が回っている状態です。来月以降の入金と支払いの並びまで含んだ評価とは限りません。資金繰りの見通しは、別に確かめておくほうが安全です。

Q4. 弁護士に行くのは、もう終わりということですか。

そうとは限りません。弁護士に聞けるのは手続きの選択肢であって、使うかどうかは別です。選択肢を知ったうえで、続ける道を選ぶ方もいらっしゃいます。わたしたちは状況を整理し、必要な場合に倒産処理に精通した弁護士と連携して、その前後をお支えします。

まとめ

  • 税理士の独占業務は、税理士法第2条第1項の3つ(税務代理/税務書類の作成/税務相談)
  • 会社を続けるか畳むかは税の計算ではないため、その3つの外にある
  • 返事が曖昧に感じられるのは、力量ではなく担当範囲の問題である場合が多い
  • 問いを税務の言葉に置き換えると、税理士は具体的に答えられる
  • 顧問契約は急いで切らない。申告が止まると、滞納の全体像が見えなくなる
  • 判断の材料は、直近3期の申告書一式・滞納の残高一覧・今期の試算表の3点

動画でもふれています

専門家の使い分けについては、YouTube「倒産レスキュー365」でも取り上げています。目で文字を追うのがつらい日は、耳だけでもどうぞ。

※本記事は2026年8月16日に作成した記事を、2026年8月24日に全面的に書き直したものです。

出典

・国税庁「税理士制度」/税理士法基本通達 第2条《税理士業務》関係(税理士法第2条第1項第1号〜第3号)

・弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

・日本税理士会連合会「税理士登録者数」2026年7月末現在

ご相談お申込み 03-5337-405724時間365日いつでも受付

ご相談お申込み