勇気と想像力とサム・マネー

チャーリー・チャップリンの『ライムライト』の中のせりふですね。
カルヴェロがテリーを励まそうとした言葉です。

このせりふは、実にさまざまに誤って記憶されているようなのです。

勇気と想像力とサムマネー
勇気と希望とサムマネー
夢と希望とサムマネー
夢と勇気とサムマネー
愛と希望とサムマネー、などなど。

わたしは、「愛と勇気とサム・マネー」と憶えていました。

頭に「人生で大切なものは三つある」というせりふがつくと記憶している人も多いです。
正確には、以下です。

「Yes, life is wonderful, if you’re not afraid of it. All it needs is courage, imagination, and a little dough. 」

訳すと以下のようになると思います。

「人生はそれを恐れなければ、素晴らしいものなんだ。
それには、勇気と想像力以外の何物も必要じゃない。
…そのうえに、ほんの少しの食べ物があれば、ね」

後半のリズムは、畳み込むように「courage, imagination」が必要だと言って、最後に(硬い言葉ばかりじゃなんだからと、付け足すように)「and a little dough.」 と言っているように思えます。

Courage(カリッジ)は文字通り[勇気]か[精神力]でしょう。
Imagination(イマジネーション)は[想像力]です。
a little dough(リトル・ドウ)のdoughはお金の俗語と訳されることが多いようですが、ドーナッツ(doughnuts)のドゥ(小麦粉を練ったもの)ですから、[お金]よりも[食べ物]としたほうがいいと思います。

ポイントは前半にあるように思います。

すなわち、Yes, life is wonderful, if you’re not afraid of it.(人生はそれを恐れなければ、素晴らしいものなんだ)という、後半の言葉の〝前提〝が重要なのではないか。

つまり、人生で成功するため、でもなければ、生きていくうえで大切なこと、でもなく、恐れることなく人生(その人生はすばらしいに決まっている)に立ち向かうこと、を前提にしていることこそが重要なのではないか、と思うのです。

そのように読んでいくと、[勇気]は、これは人生を恐れないという前提に対比した、闘争心を持った信念に見えてきます。
[想像力]はその信念を維持するために必要な心構えでしょうか。
そして[少しの食べ物]は、そうした堅苦しい精神主義的なイメージだけでなく、もっと日常的な少しは食べるものも必要だ、と説いているように思えます。

チャールス・チャップリン。優れたクリエーターですね。脱帽です。

「脚がなくては踊れないわよ」
テリーの泣き言にカルヴェロがさらに続けます。
「わたしは腕のない男を知っている。でもかれはヴァイオリン協奏曲を弾くんだ。そいつは自分の脚でヴァイオリンを弾くんだ。
きみは、闘おうとしないだけなんだ。人生を降りちゃってる。
いつも病気のなかで、死のなかで、自分にブツブツいっている。しかし、死と同じように人間には避け得ない事実もあるんだ。それは〝生〝なんだ。人間の生なんだ。
この宇宙を動かし、地球を回転させ、樹々を育てている力を、考えて見給え。
同じような力が、きみのなかにもあるんだ。
少なくとも、勇気は持つんだよ。そして自分でそれを使おうという心がけを持つんだ!」

わたしは、倒産の局面にあるすべての経営者にこの言葉を贈りたいと思います。

どうか、この言葉から勇気と想像力が得られますように。

(初出:2012年12月、修正:2021年7月14日、最終修正2024年6月27日)

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