ポジティブ・シンキングへの疑問

プラス思考といい、ポジティブ・シンキングといい、よいところばかり見ようとする考え方に大いに疑問がある。

〝勝負には勝てなかったけど、ファインプレイがあったからよしとする〝
〝いいプレイはできなかったけど、オーディエンスに受けたからいいや〝
〝自己暗示をかけると幸せでいられるから、ミスがあっても気にしない〝

これらを経営レベルで考えると、

〝利益は上がらなかったけど、社員が喜んでくれたからよい〝
〝欠損は出したけど、お客さんに受けたからよしとしよう〝
〝会社に活気があるから、営業成績なんかどうでもいい〝

のようになるのだろうか。

クライシス・マネジメントの立場からは、このような経営者は絶対に評価できない。

ポジティブなところを評価するより、ネガティブなところを反省しなければ、事業経営は必ず破綻する。
もしマネジメントレベルで比率を考えるならば、ポジティブ3:ネガティブ7、くらいだろうか。

〝利益が上がらなかったところ〝や、〝欠損を出した理由〝を明確に摘出しなければ、次の決算でまたマイナスを出し、そのうちに経営危機に陥って倒産してしまう。
この道は間違いなくそうなってしまう一本道なのだ。

いいところを伸ばすより、悪いところを直す。
これがマネジメント(事業経営)の鉄則である。
いいところは必ず真似されて陳腐化してしまうが、悪い所を修正しなければそのまま残すことになり、決してよくはならないのである。

事業経営の目的は[利益を出すこと]だ。

利益を出すことに執着できない人は経営者には向いていない。
その利益を、無限に大きくする志向の強い人も、実は経営者には向いていないのだが…、この話はこの文脈とは異なるので、割愛する。

そのような事業経営に向いていない経営者の中に、この〝ポジティブ思考〝の方が多いのではないか、とわたしは感じている。

事業経営におけるポジティブ思考は、〝言いわけ〝でしかない。それも、破綻に向かう言いわけである。
わたしにはポジティブ・シンキングというのは、〝反省知らず〝にしか見えない。
厳に慎まなければならない。

これは、事業経営だけのことだろうか…。

わたしは、死に直面しているような究極の局面でない限り、ポジティブ・シンキングは〝危険な思想〝であると思っている。
ポジティブ・シンキングを商売にしようとした人か、美談好きのTVマンあたりから始まったのではないかしらん、と睨んでいるが、経営者諸君よ、おめおめこの危険な思想にだけは陥らんことを祈る。

(初出:2012年12月、修正:2021年7月14日、最終修正2024年6月27日)

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