個人法人における破産の違い~自己破産と債権者破産
破産にはどのような分類があるのでしょうか。この記事では個人と法人、それぞれにおける違いを踏まえながら内容説明を行っていきます。
この記事は内藤が執筆しております。
なお、破産という言葉の定義・説明については、こちらの過去記事を参照してください。
倒産と破産
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破産の分類
破産者自らの申し立てによる破産は、個人の破産を自己破産、法人の破産も自己破産と呼びます。
当事者ではなく債権者などの第三者が申し立てる破産は、債権者破産(第三者破産)と呼びます。なお、債権者破産を実現するためには、債権者が予納金を用意しなければならず、債権が回収できることは稀なので、実際にはほとんど起こるものではありません。
破産の種類 | 自らの申し立て | 第三者による申し立て |
個人の破産 | 個人の自己破産 | 個人の債権者破産 |
法人の破産 | 法人の自己破産 | 法人の債権者破産 |
財産の取り扱いの違い
個人の破産と法人の破産の財産の取り扱いの違いはあるのでしょうか。
法人の破産
法人が破産した場合から説明します。 法人の破産は、その法人(会社)はなくなってしまいます。破産法第34条第1項に基づき、法人の一切の財産は、破産財団(破産管財人が管理・処分する権利がある、破産者の財産等)となります。
- 代表者、役員、社員、アルバイトが居なくなる
- 営業上の契約、賃貸契約、雇用契約等、契約はすべて解除される
- 不動産、機械設備、机やいすに至るまで、すべて財産が無くなる
全てがなくなってしまうので、手続きとして免責はありません。免責されるまでもなくすべてがなくなってしまうので、改めて免責する必要が無いのです。
個人の破産
個人の破産の場合、法人の破産と同様に、財産は原則は破産法第34条第1項に基づき破産財団となりますが、破産法第34条第3項に規定される、破産財団に属しない財産は自由財産(保持が許される)となります。すべての財産が無くなるわけではないという記載は、最高裁判所で作成されたパンフレット、「自己破産の申し立てをする方のために」のQ&Aにも記載があります。
- 現金は99万円以上がなくなる
- 預金は20万円以上がなくなる
- 市場価格で20万円以上の財産はなくなる
ただし
- 車でも査定価格が20万円以下なら保持できる
- 家財道具も、20万円以上で売れなければ持っていられる
- 100万円で買ったパテックでも買い取り価格が20万円以下なら持ち続けられる
なお、これらは申告制なので、判らなければ問題にはなりません。また、破産管財人が個人の破産者の家に来てどんな財産があるかをチェックするようなことは、原則としてありません。
法人の破産では財産などすべてがなくなりますが、個人の破産では生きていかなくてはならないので、すべての財産がなくなるわけではありません。申し立てた債務は免責されますが、それ以外のものは保持し続けられます。これが、法人の破産と個人の破産における財産の取り扱いの大きな違いと言えるでしょう。
まとめ
破産は自らが申し立てる自己破産がほとんどであり、債権者破産というのは費用面の問題で、現実的にはなかなか起こりません。
個人の破産と法人の破産の違いは、財産が残るか残らないかという大きな違いがあります。
なお、この法人の破産と代表者個人の破産は、ワンセットで行うのが原則です。その理由については、経営者は個人破産すべきなのかをご参照ください。
経営者は個人破産すべきなのか
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少額管財が運用されてからも、上述の理由からか、倒産処理を行わず放置逃亡してしまう方はたいへんに多いです。ですが、当事務所では放置逃亡は決してお勧めしません。
放置逃亡がもたらす人生への深刻な悪影響については、「放置逃亡」が非推奨である理由をお読みください。
「放置逃亡」が非推奨である理由
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倒産処理の相談は、一日でも早い方が望ましいです。是非すぐに当事務所にご相談にいらしてください。
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当事務所の内藤明亜も才藤卓も、倒産と破産の経験者です。
執筆: 内藤
(初出:2024年10月23日)
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