倒産と破産
[倒産]と[破産]は、一般的にたいへん判り難いことのようだ。
何回説明してもご理解いただけないようようなので、改めて説明しておく。
[倒産]の意味は、債務を残して事業を停止すること。
すなわち、“事態”だ。
債務を残して事業が継続できなくなることは、選択の余地なくおとずれることがある。
[破産]は、地方裁判所に申立てをして(破産管財人によって)債権債務の処理をしていただくこと。
すなわち、“処理”、であり“手続き”の方法の一つなのだ。
倒産は選べないことが多いが、破産は倒産者の意思で選ばれることなのだ。
[倒産]は法律用語ではないが、[破産]は本来は法律用語なのである。
さらに、法的手続きとしての破産には[法人の破産]と[個人の破産]があることがこの用語をわかりにくくしているようにも思える。
時間の流れで言えば、まず[倒産]の事態が起き、その処理方法として[破産]の手続きに移行することになる。
厳密にいえば、
① [倒産]の事態が起こり、
② その問題解決にいくつかの方法を模索する(おおよそ以下の選択肢がある)。
②-1 そのまま[放置]し、様子を見る
②-2 そのまま[放置]し[逃亡]する
②-3 弁護士に駆け込んで[弁護士介入]、債権者と対応していただく
※ 民事再生法や会社更生法など、小規模零細企業にはそぐわない方法は割愛する。
③ 弁護士と相談し、選択肢の中から選択する。
③-1 弁護士に[任意整理]を委任する
③-2 弁護士を介して[破産]する
④ 選択肢の一つの、[破産]の手続きに入る。
④-1 [破産]しないという選択もあり得る。
ことになる。
これが[倒産の“Xディ”の三つのステップ]なのだ。
当事務所は、①の前段階から相談に対応していることは言うまでもない。
②-3の段階で弁護士に相談に行っても、[破産]以外の選択肢を提示する弁護士は少ないことは問題だと思っている。
さらに言えば、[倒産]の事態に至っても、[破産]の手続きまでに時間がかかっても問題はないのだ。
例えば、
・10月30日に、[倒産]の事態が避けられないのが判明し、
当事務所や弁護士事務所に相談に行き、選択肢の中から方針を決定し、申立て前処理を行い、
・12月31日に、債権者に[弁護士介入]の連絡をしていただき、
ここからは債権者対応は弁護士が行う。
債権調査や事業所の賃貸契約などの解除など、引き続き申立て前処理を行い、
・3月31日に地裁に[破産]の申立てを行う。
というような流れになることもある。
長いケースでは、[倒産]ののち、一年以上かかって申立てを行い[破産]の手続きに至る場合もある。
もちろん、それなりの理由がなければ不自然だが。
[倒産]という言葉は、個人に使われるよりは会社(法人)に対して使われることが多い。
会社(法人)が事業を継続できなくなって、債務超過で(すなわち被害者を出して)事業を停止することを意味している。
一般的には、「あの会社が倒産した」とは使うが、「あの人が倒産した」とはあまり使われないように思う(言葉としては間違ってはいないのだが)。
「あの会社が倒産した」というのは、会社が事業を停止し世の中から消滅することを指す。
その場合に、法的処理をしたものかそうではないかは問われない。
法的処理をしたのであれば、「あの会社は[法人の破産](という手続き)をした」ということになる。この場合、会社が地方裁判所に[法人の破産]を申し立てて、[破産決定]が出たことを意味することになる。
ただし、一般的には法的処理をせずに[放置逃亡]や[任意整理]の場合にも[倒産]という言葉を使うことは当然ある。
どちらにせよ、[倒産]とは事業を停止し会社がなくなってしまうことを指す。
一方[破産]のほうは個人にも法人にも使われることが多い。
つまり、「あの会社が破産した」とも、「あの人が破産した」とも使われる。
個人の場合は会社と違って事業停止し世の中から消滅することはない。
法的処理をしようがしまいが、人(個人)は生き続ける。
「あの人が破産した」というのも、「あの人が[個人の破産](という手続き)をした」ということで、個人が地方裁判所に[個人の破産]を申し立てて、[破産決定]が出たことを意味する。
しかし、もちろん、何の処理もせずに放置(逃亡)した場合にも[破産]という言葉を使うことはある。
法的処理で言えば、
個人の[破産]には[免責]があって、破産が認められればほとんどの場合その債務は[免責]されて一切の債務はなくなり、債権者からの請求からまぬかれるのである。
一方、
法人の[破産]には[免責]がないので、(会社はなくなってしまうので)会社のなした契約の一切を解除、破棄してなくしてしまわなければならないのだ。
だから、会社のなした契約のすべてをなかったものにするのは、たいへんエネルギーのいることなので、費用もかかるのだと理解していただきたい。
現実的には弁護士でも、「倒産事件ですね」とか「倒産案件(倒産事案)ですね」などと使うので、あまり厳密に考えないほうがいいとも思われるが…。
ただ、法的処理としての[破産]には、法人と個人があるということは理解しておいていただきたい。
※ 詳しくは、【倒産処理の種類】などを参照してください。
※ このエントリーは2013.1.28.に書かれたものだが、正確さを期すために2019.4.11.に四度目の修正をした。
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