【はれのひ】問題を考える ② 【はれのひ】が破産申立てをした
経営危機コンサルタントのわたしに、【はれのひ】を擁護する意図は全くない。
わたしの企図はこの素材で、事業経営の問題点、危機管理、破綻処理(倒産処理)、 倒産犯罪などについて理解を深めていただきたいのだ。
* 【はれのひ】問題を考える ③ 【はれのひ】はなぜ倒産したのか
具体的には、
・どうすれば【はれのひ】は経営危機に陥らないようにできたか
・どの段階で倒産を意識したのか
・どうすれば【はれのひ】の倒産は回避できたのか
・経営者としてどうあればよかったのか
・被害を少なくするのはどうすればよかったか
・自らのダメージを少なくするにはどうすればよかったか
を探っていきたいのだが、第二回の今回は社長の記者会見を見た印象を整理しておく。
ここに書かれたことは、ほとんどがわたしの憶測であることをお断りしておく。
2018年1月26日金曜日夕方、【はれのひ】の代表取締役、篠崎洋一郎が横浜市内で記者会見した。
ここで判明したことは、前々日の24日に横浜地方裁判所に[法人の破産]の申立てをして受理され、破産管財人が決まった、というものだった。
【はれのひ】の破産申立ての経緯
先に述べたように、債務超過で資金不足だったので“事実上の倒産”状態だったのだが、横浜地裁に破産を申立てが受理されたので、[法的処理]で[法人の破産]が成立したことになる。
破産の申立ては、[破産申立て書]と[債権者一覧]に[予納金]を添えて地裁に提出するのが決まりだ。
会見では負債総額及び債権者数が特定されていないようだが、社会的影響の大きさから地裁が書類は不備でも受理したということだろう。
申立てには[申立て代理人の弁護士]が必要となる。
同席していた申立て代理人は、横浜綜合法律事務所の吉田進一弁護士と大熊一毅弁護士の二名。
債権者数は1,600名。
うち1,300名がいわゆるお客様、だという。
破産管財人には多摩川法律事務所の増田尚弁護士が選任された。
負債総額と資金繰り状態
記者会見の説明によると、負債総額は以下と説明されていたが、債権者数も負債総額も明確にはなっていない模様だ。
・優先債権である[税金等の滞納分]が約5,500万円、
・優先債権である[未払いの賃金]が35名に対して約1,800万円。
・[金融機関に対する借り入れ]が12社で、約3億8000万円。
・[一般事業者]、約1億8000万円。
判明してる分が6億3500万円。
その他いわゆるお客さまに対する債務が、おおよそ4億円程度で合計すると[10億円]かそれを超えるか、という説明のようだ。
年商は3.5~4.0億円規模のようだが、それに対して金融債務が3.8億円と年商を超えているので、経営状態は末期的経営危機状態でいつ倒産してもおかしくはない資金繰り状態だったのだろう。
そもそも、3.8億円の金融債務の金利は、年率2.0%だとしても760万円(月次63.3万円)かかるのだ。
3.0%だと1,140万円(月次95万円)。
加えて、税金と労働債権が7,000万円以上あり、税金は“差押え”を通告されていただろうことがうかがえるほど切迫していたはずだ。
労働債権がこれほどあると社員はいつかないだろうし、社員が労基に駆け込み、労基からも相当追い込まれていたはずだ。
破産申立ての費用
負債総額10億円以上の予納金は(東京地裁の基準では)、
・法人が[400万円]
・代表者個人が[400万円]
法人の破産と代表者個人の破産がセットのなるのは、小規模零細企業の代表者は法人の債務の“連帯保証(個人保証)”をさせられているからに他ならない。
現段階の運用では、法人の破産だけも、代表者個人の破産だけも認めていただけないので、セットになるのだ。
予納金とは、破産管財人の費用と考えていい。
・申立て代理人の弁護士の受任料が同等かかる
とされているので、
・合計で[1,200~1600万円
破産(いわゆる倒産)の運用は地裁の裁量に任される部分もあるので、上の金額通りとはならないが、申立て代理人の弁護士が地裁と相談したとしても、最低でも[1,000万円]は用意できなければ破産の申立てを受け付けないと思われる。
[法人の破産]処理には費用がかかるのだ。
法人(会社)というのは、設立するには多くの費用はかからないが、倒産処理するにはかなり多くの費用がかかるのだ。
ちなみに法人の破産の予納金額(東京地裁の場合)は、
最少ランクは、負債総額5,000万円未満で
[法人]が70万円、
[代表者個人]が50万円。
これ以外に申立て代理人の弁護士費用がかかるのだ。
申立て代理人の弁護士に申立て作業を委任し、債権者への介入通知と初期対応をしていただかなければならない。
破産申立てが受理され、破産管財人が選任されてからは、倒産会社の財産をすべて換金し、債権者の債権額を厳密に調査し、会社の行った契約をすべて解除する、など存在した会社をなくす作業をしなくてはならない。
これらの作業は破産管財人によってなされるのだが、その作業量が多ければ[予納金]が多くなるのは避けられない。
しかし、これらは倒産会社の経営者(経営陣)がこしらえたものなのだ。
その経営者(経営陣)が当事者能力を失ったために、その尻拭いを弁護士(破産管財人も弁護士だ)にやっていただくという構図なのだ。
経営者(経営陣)が処理しきれなかったために最低でも[1,000万円]。
この費用を【はれのひ】の社長はどのうな手段で用意したのだろう。
事業停止(社長が逃げたと言われる成人式の当日、1月8日)から三週間近くたって申立てをした経緯は、
・受任してくれる[申立て代理人]のなり手がなかった(費用が足りなくて)、
・[申立て書]ができなかった、
・[債権者一覧]が不完全だった、
・[予納金]が足りなかった、
のどれか(あるいは全て)だろう。
申立て代理人と破産管財人の作業領域
先回も書いたが、申立て代理人の作業領域は多領域にわたる。
この【はれのひ】の倒産処理を弁護士が受任するとどのような作業が待っているのか。
・まず【はれのひ】の預金口座などの財産を管理する。
・債権者リストを作成し、それらの債権者に[弁護士介入]の連絡をする。
・債権者からの問い合わせにはすべて対応する。
・債権調査を行い、債権の全貌を把握する。
・会社のした契約のすべてを解除する。融資、雇用、リース、賃借、など。
・マスコミ対象の記者会見は必要になる。
・給与などの労働債権があれば優先的に対応する。
・社員に対しての説明会も必要になる。
・(根)抵当権などを設定している債権者である金融機関と対応する。
・優先債権の税務署や社会保険事務所と対応する。
・債権者一覧ができたら[破産申立書]を作成する。
・地裁に[破産申立書]に[予納金]を添えて法人の破産の申立てをする。
・代表者個人の破産もせざるを得ないのであればその手続きもする。
・地裁に任命された破産管財人と対応する。
・などなど
社長は記者会見では「逃げたのではなく、待機していた」と言っていたが、弁護士には相談していたが、費用が足りなくて、誰かに調達を依頼してその返事を待っていたと思われる。
さらに、地裁に受理されるまで中一日かかった経緯は、
・[破産管財人] のなり手がなかった
あるいは
・地裁と管財人になる弁護士との間で協議していた
と思われる。
破産管財人の作業領域も広大になる。
上に挙げた申立て代理人の作業のほとんどが被ってくるのだから。
地方都市の地裁では、破産管財人のなり手がなくて半年も申立てが受け付けてもらえなかったケースもある。
横浜地裁もその辺で苦慮したのではないかと思われる。
【はれのひ】の倒産の傾向
一般的な倒産(といっても基準があるわけではないが)と較べて、この【はれのひ】の倒産の傾向を見てみよう。
・債権者(被害者)が多岐にわたっている。
特に一般顧客(いわゆるお客様)が特に多い。
・倒産時に債権者に説明できなかった。
一般的には申立て代理人の弁護士が説明する。
・債権者に混乱を招いた。
倒産後説明まで時間がかかりすぎた。
・債権額が大きい。
年商規模に比して債権額が大きい。
・配当が期待できない。
会社に財産がないので、配当、返金はできそうもない。
・優先債務が大きい。
労働債権や税金は優先債権なので、一般債権までとうていまわらない。
これらのことから、この【はれのひ】の倒産は
・かなり悪質で、
・経営者の説明責任が果たせず
・混乱を招いた
すなわち、サイテーな倒産と言えるだろう。
少なくとも、わたしのところに相談に来た方で、これほどまでサイテーな方はいらっしゃらなかった。
では、
具体的には、
・どうすれば【はれのひ】は経営危機に陥らないようにできたか
・どの段階で倒産を意識したのか
・どうすれば【はれのひ】の倒産は回避できたのか
・経営者としてどうあればよかったのか
・被害を少なくするのはどうすればよかったか
・自らのダメージを少なくするにはどうすればよかったかという点になるのだが、それらについては、次回以降に。
* 【はれのひ】問題を考える ③ 【はれのひ】はなぜ倒産したのか
ここに書かれたことは、ほとんどがわたしの憶測であることを、再度お断りしておく。
※ この【はれのひ】の倒産は【てるみくらぶ】の倒産および逮捕の件と併せて、問い合わせも多いことから断続的に解説的な連載をする予定です。
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