少額管財を実現する要件と少額管財のメリット

本記事は才藤が執筆しております。

法人および経営者個人の破産処理において、当事務所がお勧めするのは、少額管財と呼ばれる倒産処理の方法です。

これは従来の方法に比べて、予納金が安くて済む、時間がかからないというメリットがあります。

この少額管財について2回に渡ってご説明しています。

  1. 法人の破産において、少額管財を実現する要件と少額管財のメリット(この記事)
  2. 少額管財を実現するための【申立て前処理】について

続きの記事はこちらをご覧ください。

本記事は才藤が執筆しております。 法人および経営者個人の破産処理において、当事務所がお勧めするのは少額管財と呼ばれる倒産処理の方法です。 これは従来の方法に比べて「予納金が安くて済む」「時間がかからない」というメリットが […]

少額管財とは何か

少額管財とは、東京地裁(民事20部)が開発し、2002年(平成14年)4月から開始された倒産処理の運用方法です。

実は、破産処理については法人の場合も個人の場合も、大まかな運用方法の全国的な基準はあるものの、細部にわたる運用方法は地方裁判所の裁量に委ねられています。

倒産件数が多くなる反面、予納金が高額なことから法的破産処理をせずに放置・逃亡が少なくない現状から、低額かつ迅速にできる運用方法を模索した結果、この少額管財が開発されたものと思われます。東京地裁での破産案件のほとんどが少額管財で通常管財とも呼ばれています。ここでは分かりやすく少額管財と呼びます。

その特徴は、通常の管財事件と比べて

  • 予納金の金額は法人の破産と経営者個人の破産がセットで20万円程度(東京地裁の場合)で、かなり低額で済むこと

  • 手続きが簡易で時間がかからないこと

が挙げられます。

しかし、小規模零細企業のすべての法人の破産が少額管財を適用されるわけではありません。

では、小額管財を実現するための要件とはどのようなものなのでしょうか。

小額管財を実現する要件

少額管財の運用を採用している地方裁判所に申し立てる

まず少額管財は、すべての地裁で運用されている訳ではないという点が挙げられます。つまり、少額管財を採用していない地裁には申し立てること自体ができないのです。

 

では、地裁が少額管財を採用していない地域の方が、少額管財で処理したい場合はどうすればよいのでしょうか。

 

方法の一つは、その地裁に相談してみる、というものです。東京地裁で実際に少額管財を行ったことがある申立て代理人(弁護士)がお願いすると「ではやってみましょうか」と受けてくれる場合があるようです。

 

もう一つの方法は、東京地裁で受け付けてもらうことです。

 

東京の弁護士に申立て代理人を依頼すれば、顔なじみの東京地裁の事務官に頼んで、東京地裁で受け付けていただけるようにしてもらえる可能性があります。(地方の弁護士でも、東京地裁の民事部の事務官とのコネクションがあればもちろん可能だと思われます)それ以外にも、例えば、債権者の本社が東京にあるといった場合など、どこかに東京とのつながりがあれば、東京地裁はかなりの確率で受け付けてくれるようです。

 

しかし、地方の案件を東京地裁に申し立てるには、いくつかの条件があってそう簡単なことではありません。
その条件の一つは、債権者にその地方の事業者が多く含まれていないことです。

 

東京地裁で申し立てる場合、債権者集会は東京で開かれますので、そのために債権者に上京してもらうリスクを負わせないようにする配慮があるからです。特に個人事業者が含まれていると適用されないようで、地元の地方裁判所で申し立てしなさいと指導されるようです。

 

そうならないためには、要件③で述べる、申立て代理人弁護士による申立て前処理が重要になってきます。

申立て前処理にて、その地方の個人事業者への支払いを完了しておいて、債権者一覧に載せない状態にしておくというやり方があるのです。ただし、それは偏頗弁済に抵触し詐害行為とみなされる恐れがありますので注意が必要です。

それを回避するための方法はないことはないのですが、詳しく状況を聞かなれなければ適切な助言はできませんので、ご相談にお越しいただくことをお勧めします。

運用を熟知した申立て代理人弁護士による申立て

少額管財での破産申し立てをする際、申立て代理人弁護士が申立てをすることが必要です。

また、その弁護士が少額管財の運用を承知していることがこの要件には含まれているようです。

少額管財は東京地裁に集中する傾向がありますので、少額管財の経験を積むことができる東京の弁護士(破産管財人も)のスキルは地方都市と比べて上がることになります。

それは反面、地方の弁護士は少額管財のスキルがなかなか上がらないということを意味します。

そのため、倒産問題に関する”キャリア不足”から来る”融通のきかない弁護士(や破産管財人)”に当たってしまい困っている方からの相談もよくあるものです。

少額管財に限らず倒産処理に関しては、ここ20年ほどの間に弁護士格差が相当に出てきたのを感じます。

当事務所にご相談頂ければ、破産処理に長けた有能な弁護士をご紹介致します。

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申立て前処理ができていること

さらに、申立て前処理が適切にできているか、というさらなるハードルがあります。

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申立て前処理について簡単にご説明すると、破産管財人にとって簡易な処理ができる状態での申立てのことです。(詳しくはリンク先ページをご参照ください)。

少額管財は、破産管財人がつく運用です。
破産管財人は地裁が任命しますが、その費用は破産者が納めた予納金から支払われることになります。

つまり、破産管財人である弁護士が、20万円程度の費用でできるような簡易な作業内容になっているかどうかが最大のポイントなのです。

この破産管財人の作業内容を簡易にするための作業が、申立て代理人弁護士による申立て前処理なのです。

具体的には、不動産の処分、在庫の処分、さらに事業所の撤去などがあります(これ以上のご説明することはここでは難しいので、当事務所に一度相談に来ていただければ詳しくお伝えします)。

少額管財での申し立て後に、破産管財人がやるべき作業量が多いと判断されると、地裁の方針として予納金の額が30万円になったり50万円になったりすることがあるようです。

それらの申立て前処理を確実に完了させるために、事業停止ののち、かなりの時間がかかる場合があります。
(わたしが見たケースでは、事業停止後、半年近くかかったことがありました)

さらに、破産管財人による作業量がかなりあると判断されると「少額管財では受け付けられないので”管財事件”として申し立てなさい」と指導されてしまうようです。

そうなると、残念ながら予納金はぐんと増えてしまいます。
(通常の管財事件の場合の具体的な予納金額は下記の記事をご参照ください)

倒産の法的処理の意思を固め、弁護士に相談に行くとほとんどの場合[予納金]を告げられることになる。 この予納金は、[管財事件]と呼ばれる運用方法であり、負債総額によって定められている。 負債総額は財産との差し引きではなく、 […]

要は、少額管財の運用を実現するためには、申立て前処理を確実に実行し、破産管財人の作業量を減らさなければならないのです。

少額管財のメリット

予納金が安い

具体的な例でご説明しましょう。

(例)負債総額8,000万円、うち経営者の連帯保証分が6,000万円ある場合

従来の運用(通常の管財事件)と少額管財での運用の予納金の差は以下のようになります。

【従来の予納金】(通常の管財事件)
法人の破産の予納金額=100万円
個人の破産の予納金額= 80万円
合計 180万円

【少額管財】(東京地裁の場合)
法人と代表者一名の個人破産の少額管財予納金額=20万円

その差はなんと160万円にもなります。

少なくとも東京地裁の場合は、中小零細企業における破産のように小規模なものの多くは少額管財にて処理を受け付けてくれるようになりました。

しかし、今までに述べたような少額管財を実現するための要件を満たさない限り、少額管財で受け付けてもらえません。
また、債権者数が膨大など規模が大きかったり、債権者との間に揉め事があるなど難易度が高いものは、通常の管財事件での処理となり従来の予納金を要求されることがあります。

比較的短期間で終わる

メリット①として予納金が低額で済むとお伝えしました。

このことは、破産管財人の報酬も低額になることを意味します。
なぜなら倒産処理においては、破産管財人の報酬は倒産者が納めた予納金から支払われことになるからです。

報酬が低額なのですから、当然、破産管財人の作業負担は少なく抑えられるわけで、つまり迅速で簡易な手続きで終結するということになります。

前述した申立て前処理は、通常の管財事件と比べて比較的短期間で処理することができるというメリットもあげられます。

 

では少額管財を実現するためにどうしたらよいでしょうか? 続きは下部のリンクからご覧ください。

本記事は才藤が執筆しております。 法人および経営者個人の破産処理において、当事務所がお勧めするのは少額管財と呼ばれる倒産処理の方法です。 これは従来の方法に比べて「予納金が安くて済む」「時間がかからない」というメリットが […]

執筆: 才藤

(初出:2013年8月1日、修正:2021年2月5日、最終修正2024年8月16日)


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