少額管財を実現するための【申立て前処理】について[改定]

経営危機コンサルタント才藤のブログです。

法人および経営者個人の破産処理において、当事務所がお勧めするのは【少額管財】と呼ばれる倒産処理の方法ですが、これは従来の方法に比べて「予納金が安くて済む」「時間がかからない」というメリットがあります。

この【少額管財】について3回に渡ってご説明しています。

1.少額管財を実現するための【申立て前処理】について(この記事)

2.法人の破産における【少額管財】とは何か〜そのメリットと注意点

3.法人の破産において、少額管財を実現するための要件

この記事では、少額管財を実現するための【申立て前処理】についてお伝えします。

少額管財を実現するための【申立て前処理】について

【申立て前処理】とは?その目的

【申立て前処理】とは、申立て代理人の弁護士が法人の破綻処理を受任した後で、地裁に対し破産申し立てをするまでにやるべき作業を意味します。

この作業は

・「少額管財」の適用を促す

・「偏頗弁済」および「詐害行為」に抵触しないように破産処理を行う

という目的で行われるとご理解ください。

【申立て前処理】の具体的な作業内容

その具体的な作業内容は下記の通りです。

・売掛金の集金や不動産の処分など、会社の債権・財産の換金

・会社の債務の把握(債権者一覧の作成)

・会社の事業所などの撤去(これは場合によって時間も費用もかかる) 、など

これらの「申立て前処理」が確実にできてはじめて少額管財での破産処理が可能になります。

また、「法人の破産において、少額管財を実現するための要件」でもご説明した通り、この「申立て前処理」の破産処理上の目的は、破産管財人の作業内容の軽減にほかなりません。

「少額管財はできません」「申立て前処理はできません」と言う弁護士もいる

「申立て前処理」は、経験値があり有能な申立て代理人の弁護士がいれば、それほど難しいことではないのですが、実は弁護士によっては「少額管財での処理はできません」「申立て前処理もできません」と突っぱねてしまうケースがあると依頼人の方からよく聞きます。
(この場合、要件的に「できない」というよりは、その弁護士が「運用をよく知らないためにできない」というケースが多いと推察されます)

となると、その弁護士は、多額の予納金が必要となる、通常の「管財事件」での破産処理を勧めてくることになりますが、費用が大きすぎるため今度は経営者が「できません」と言う立場になってしまいます。

こうやって、少額管財の実現も、通常の管財事件による破産処理もできずに、【放置・逃亡】するケースがたくさん起きています

それは、相談に行った弁護士の経験値のなさが原因のこともありますし、経営者による破産の意思決定が遅すぎることが原因であることもあります。

もし不幸にもそのような弁護士しか見つけられない場合は、経験値の高い弁護士をご紹介しますので、ぜひ当事務所にご相談ください。

わたしたちは、再起が非常に難しい【放置・逃亡】だけはどうしても避けていただきたいと願っているのです。

「申立て前処理」はいつ行われるのか

倒産のステップには3つの段階があることは、別のブログ記事【倒産の[Xディ] 三つのステップ】で述べました。

第1段階:事業を止める日

第2段階:代理人(弁護士)の介入(債権者への連絡)

第3段階:地方裁判所への破産の申し立て(この後に破産管財人が任命される)

「申立て前処理」は、この第3段階までに行われる作業を言います。

また、予納金の納付金額が決まるのは第3段階の地裁に申し立てた段階ですので、少額管財を実現するためには、第1~第2段階で、申立て代理人弁護士による適切な「申立て前処理」をすることが肝要です。

なお、破産の意思を決めた段階において「社員の給料だけは払っておきたい」とか「連鎖倒産を防ぐために下請け会社の売掛だけ支払いたい」など、特定の債権者に支払いをしてしまうと、【偏頗弁済】や【詐害行為】に該当するとして破産管財人に否認される可能性が高くなりますので、そうならないような環境にすることが重要になります。

「そうならないような環境」をいかに実現するかの詳しいお話はご相談にいらした際にお伝えします。

小規模零細企業の場合「申立て前処理は不可欠」と考えた方がいい

もし破産処理が通常の「管財事件」で処理される場合、予納金の最低金額は、負債総額5,000万円未満であれば、[法人が70万円]かつ[代表者個人が50万円]で、合計[120万円]となります。

一方、「少額管財」であれば、[法人と経営者個人合わせて20万円]で済みます(地裁によっては30~50万円かかる場合もある)。

地裁によっては少額管財の運用がないところもありますが、「申立て前処理」がきちんとできていれば、通常の管財事件で処理されたとしてもその予納金を大幅に減額してくれることもあり得ますので(破産の運用はかなりの部分が地裁の裁量にゆだねられているものです)、小規模零細企業の倒産処理には「申立て前処理は不可欠」と考えた方がよいのです。

繰り返しになりますが、倒産処理の相談の場で弁護士から「少額管財での申立てはできない」あるいは「申立て前処理ができない」と言われた場合は、その弁護士には委任しないことをお勧めします。

小規模零細企業の経営者にとっては、その後の再起に関わる大問題なのですから。

そのような事態に至った場合には、ぜひ当事務所にご相談いただければと思います。

また、下記の記事もぜひご参照いただければと思います。

[ 倒産の費用(弁護士費用)について ]

[ 弁護士のご紹介について]

(初出:2014年5月13日、修正:2021年2月5日、最終修正2024年6月15日)

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