倒産の実録(飲食業のケース)

今回は、ある会社の倒産に至るまでの経緯と、その過程で行われた様々な対応について事例をご紹介します。

本記事は才藤が執筆しております。

はじめに

今年も昨年と同様に飲食店の倒産増加傾向が止まらない可能性が高いと予想されます。業種問わず物価高、人件費の高騰、人材不足、価格転嫁をするが回収できるまで堪えられないなど負のスパイラルから脱却できないのが大半の事業者の現実ではないでしょうか。倒産に向けてどう準備を進めるべきか分かりやすいく実例を紹介します。

株式会社Aの倒産に至る経緯と対応

事業縮小と譲渡の試み

依頼人は40代前半の男性で起業して約10年をむかえる株式会社A(以下、A社)のオーナー。他県にも数十か所の飲食店舗を展開、自社工場もいくつか所有する企業でしたが、経営難に陥り、最終的に倒産を選択することになりました。

倒産に至る要因としては:

・コロナの影響

・積極的な出店計画が仇となり資金繰りが悪化

・各管理が行き届かなくなり顧客離れから売上減少

倒産の複数の要因が絡み合い悪循環に陥ってしまった状況下で相談に来られました。その過程で、以下のような対応が取られました:

  1. 自社工場の閉鎖
  2. 什器・機材の譲渡
  3. 商品供給体制の変更
  4. 一部事業の他社への譲渡
  5. 金融機関以外からの借入の早期清算
  6. 複数の不動産の早期売却(自宅は住み続けたいので協力者へ譲渡、他事業用は再起のために保全)

これらは事業の縮小と効率化を図り倒産費用を確保、そして再起のために必要な取り組みでした。

「「飲食業」は客足とインバウンド需要で明暗分ける2024年度の倒産は1989年度以降、最多更新へ〜2024年度(4-2月)の「飲食業」倒産〜
2024年度(4-2月)の「飲食業」倒産状況

倒産に向けての具体的な方針と準備

債権者への対応

倒産が避けられない状況の中、以下のような債権者対応が行われました:

  • 銀行とのリスケジュール交渉
  • 取引先への支払い対応
  • 従業員への対応

法的手続きと専門家の関与

この状況下で、弁護士や会計士などの専門家が関与し、以下のような支援を行いました:

  • 破産申立ての準備
  • 従業員への解雇予告に関する助言
  • 資産処分に関する助言

Xデーに向けての準備

倒産の日(Xデー)に向けて、以下のような準備が進められました:

  1. 従業員への通知方法の検討
  2. 店舗閉鎖手順の策定
  3. 資産回収計画の立案

具体的な対応事例

  • C店:新たな入居者を探し、敷金返還を目指す
  • D店:事業譲渡と従業員の継続雇用を検討
  • E工場:閉鎖と設備の譲渡を計画
  • F店:フランチャイズ契約の解消と未回収金の回収を試みる

資金繰りと支払い優先順位

倒産直前の資金繰りは非常に厳しく、以下のような対応が必要でした:

  1. 日繰り表の作成と資金の可視化
  2. 支払い先の優先順位付け
  3. 弁護士費用など必要経費の確保

従業員への対応

従業員に対しては以下のような対応が計画されました:

  • 解雇予告手当の準備
  • 未払い給与の支払い計画
  • 社会保険や雇用保険に関する手続き

経営者の心理的負担

この過程で、経営者は以下のような苦悩を抱えていました:

  • 債権者や取引先への責任感
  • 家族や従業員への影響への懸念
  • 自身の将来に対する不安

これら悩みはわたしたちのような経験者でなければ理解または共感できない領域です。

打合せ時以外にも電話などの対応で心理的なケアをして経営者を支えます。

Xデーとその後の経過

計画的に倒産に備えることは経営者の重要な役目です。

このケースではXデーまでのリードタイムは約半年を確保しました。

売掛金の回収が最も多く、従業員への給与・解雇予告手当、各不動産の売却、事業譲渡してから始動してから運営がどうなるのかの見極めの時間、倒産後の再起の目途など、多くの検討要因を勘案して計画を練りました。

実行に移すと実際は予定通り進むことはまずありませんので、そのたびに軌道修正しながらスケジュールを見直す作業を繰り返します。

事業を縮小しながら会社の資産も減らし、従業員や取引先の協力もあったおかげで、概ね計画に近いかたちでXデーをむかえることができました。

その後の破産手続きスムーズに進み法人、個人の破産、免責を受けるまで特に大きな問題もなく終えることが出来ました。

その時期には既に事業を再開していたので収入の心配もなく新たなステージに移行済みという環境が出来ていました。

また、元の自宅には住み続け、家族とも何も変わらない生活を続けています。

まとめ

この事例から、以下のような教訓が導き出されます:

  1. 早期の対応の重要性
  2. 専門家の助言を積極的に求めることの必要性
  3. 従業員や取引先とのコミュニケーションの重要性
  4. 財務管理の徹底の必要性

経営危機は誰にでも訪れる可能性がありますが、適切な準備と対応により、その影響を最小限に抑えることができる可能性があります。この事例は、経営者が自社の経営を見直す上で貴重な参考になるでしょう。

経営者は常に孤独です。

また破産を経験した人間は多くはなく、良い相談相手を早く見つけることが難しいものです。

一人で悩まずわたしたちにご相談下さい。

執筆: 才藤

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