倒産時に持てる現預金はいくらまでか
経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。
今回のブログでは、倒産を決意した経営者にとって非常に切実な問題である【倒産時に持てる現預金はいくらまでか】についてお答えします。
破産時に持てる現預金は「合計119万円」まで
法人(会社)の破産においては、会社が消滅してしまうのですから、会社に一切の現預金を残すことはできません。
一方、個人の破産においては、破産当事者はその後も生きていくのですから、現預金の保有が認められています。
新破産法(平成17年1月1日施行)の規定では、「倒産時に持てる現預金」すなわち「自由財産」分として【99万円までの現金】と、【20万円までの現預金】は持てることになっています。
すなわち、合計119万円以内ならOKです。
そしてこの現預金の金額は、基本的に「自己申告」です。
例えば、倒産処理のさなかに破産管財人
が自宅にやって来て、換金できそうな家財道具を調べるようなことはありません。
(何百例も見てきていますが、そのようなことをする破産管財人は聞いたことがありません)
実は平成17年の法改正前は、「合計66万円まで」だったそうです。
そのさらに前は、一切の現金を持つことは許されませんでした。
(わたしが破産した1994年時点での運用はこの段階でした)
わたしの破産当時に弁護士に聞いた話ですが、破産者が裁判所に出向いた際に事務官に「そこでぴょんぴょん飛んでみなさい」といわれ、チャリンチャリンと小銭の音がするとその小銭も没収されることがあったのだそうです。
つまり「裁判所からの帰りの電車賃も持つことが許されなかった」ということになりますが、その当時は「倒産者破産者には人権が認められていなかった」とでも言うべき実態があったのです。
破産時に持てる現預金に関する疑問、優先債権を残したままでもよいのか?
ここで、誰しも大きな疑問にぶつかるはずです。
それは、[優先債権]との優先順位はどうなるのか、という問題です。
すなわち、
[税金]を払わなくても、この[自由財産]が確保できるのか
[社会保険]を払わなくても、この[自由財産]を確保してもいいのか
社員の給与などの[労働債権]を払わなくても、この[自由財産]を行使できるのか
ということですが、弁護士に確認したところ、答えは「できる」とのことでした。
ただし、「優先債権を残したままだと、どう考えても破産管財人や裁判官から不評を買うことになるので、[自由財産]として119万円全額を申し立てるのは見たことがない」と弁護士は話していました。
119万円以外にも合法的に現預金を確保する方法はないのか?
さらに、その119万円以外にも合法的に確保する方法は、ないわけではありません。
ひとつは、「【申立て前処理】の段階で、法人の財産を換金して保有する方法」で、もうひとつは「個人財産を確保する方法」です。
しかしこれらの方法は、破産申立て直前に行ってしまうと、破産管財人に[詐害行為]であるとして否認され、返還させられることになりますので注意が必要です(申立て代理人の弁護士もそのような場合には何もできることがありません)。
しかし、申立てのかなり前に換金したものであれば否認されることはないことがほとんどです。
そのキーとなるところは、とにもかくにも【時間】です。
そしてもう一つのキーは、「申立て代理人の弁護士と破産管財人のチェックをくぐり抜けること」です。
が、ここに具体的な方法を明記することはできませんので、ご相談に来ていただくことをお勧めします。
わたしが見た最高額の例は、3,000万円の現金を持って倒産した例でした。
こうした例は、債権者には極力迷惑をかけずに、【申立て前処理】に相当の時間をかけて倒産処理したものです。
やはり「時間がある」ということは、倒産処理において非常に重要なファクターなのです。
(初出:2014年4月21日、最終修正:2021年2月4日)
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