事業経営の二律背反(アンビバレンツ)
事業経営は[工学(エンジニアリング)]か[投機(ギャンブル)]か、という命題がある。
基本的姿勢として安全確実を科学的に追求する経営が[工学]。
成功するか失敗するかの偶然性をも受け止めて経営するのが[投機]。
結論なんかあるわけはない。
事業経営者が[工学]として事業をするか、[投機]として事業をするか、の違いにすぎないのだ。
なかには、経営者は投機と位置づけていながら、役員や社員に対しては工学だと思わせている経営者がいる。
また一方では工学と思いながらも、役員や社員には投機だと思わせて鼓舞するような経営者もいる。
[CEO]と[COO]の関係にこのような連関を見ることは多い。
わたしがお会いした事業経営に失敗した経営者の多くは、事業を投機と考えていた形跡が強い。
投機的経営の方が刺激的でおもしろいから。
工学的経営は刺激が少なくおもしろくない。
そんな意見が多かった。
わたしの立場は奈辺にあるか。
経営コンサルタントの立場、それも経営〝危機管理〝コンサルタントの立場では、[工学]に傾斜しているといわざるを得ない。
対応する依頼人の事業に利益を無視して「投機しよう」とは絶対に言えないのだ。
事業経営は[利益]をあげなければならない。[欠損]をだすことは許されない。
事業経営とはそういうものだ。この原則に例外はない。
利益があげられるのが読めるならば、その範囲での投機的冒険は許されるとも考えているが、利益が確保できない段階での投機的冒険は、これは認められない。
利益が上げられるなら、いかなる困難も受け入れなければならない。
これが、事業経営の原点だと考えている。
これは、おそらくわたしが倒産を経験し、経営危機コンサルタントを営んでいるわたしならではの視点ではないかとも思う。
事業経営とは、利益が上げられなくなるとそれは地獄の日常になってしまうのだ。
どうか経営者諸君、しっかり利益を上げて、その範囲で多少の投機的冒険が楽しめるような事業経営を目指そうではないか。
わたしはそのような経営姿勢を応援したいと考えている。
(初出:2012年12月16日 、修正:2021年7月14日、最終修正2024年6月27日)
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