倒産の原因とは何か? その直接的原因と間接的原因
経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。
わたしは25年以上、倒産・経営危機相談の対応をしておりますが、日々経営者の皆さんからお話を伺っていると、倒産する企業には必ず原因があると確信するようになりました。
この記事ではそれらを<直接的原因>と<間接的原因>に分けて解説したいと思います。
下記のようなお考えの経営者の皆さんにこそ、ぜひ読んでいただきたい記事です。
「資金不足はたまにあるけど、いつも何とかなるから問題ない」
「零細企業だからそうそう儲からない、でも大丈夫だ、何年もやってるんだから」
「人材採用がうまくいかないのが悩みだけど、それと倒産は無関係でしょう?」
倒産の直接的原因とは何か?
そもそも「倒産」とは、
「資金がなくなり、債務(支払先や借入先)を残して事業を停止すること」です。
ですから、倒産の直接的な原因は、ズバリ【資金不足(資金ショート)】です。
会社が資金不足に陥って、債務(給与・借入・買掛・税金・社会保険・その他一般管理費など)を「もう支払えない」という状態になってしまえば、会社は維持運営できなくなり、倒産せざるを得なくなります。
しかし「資金不足」は、一時的には解決できることがあります。
例えば
・買掛先に支払いの延期を承諾していただく
・どこかから資金を調達する
ことができればその場では資金不足を免れ、倒産せずともしばらく何とかやり過ごせます。
が、短期的には倒産が回避できたとしても、資金ショートが起きるという”問題の根源的な解決”を図らない限り、遠からずまた資金不足に陥ります。
そしてその状態を繰り返すうちに、その場しのぎの(一時的な)解決すらできなくなったとき、倒産という局面に陥ってしまうのです。
よって、 この「資金不足」問題を慢性的に抱えている企業は、『倒産のフロー』のページで述べた【倒産状態】=回復不能状態に該当すると思われます。
特に、一時的かつ軽微な資金不足に慣れてしまったり、中程度に深刻な資金不足をたまたまリカバーできた”ラッキーな体験”がある経営者は要注意です。
なぜならそういう人は、もし危機的な資金不足に陥ったとしても
・申し込んだ融資が、明日実行されるかもしれない
・明日、大口の受注が取れるかもしれない
という”夢想”に惑わされてしまい、結果として「翌月末に倒産」のような急展開の倒産に陥ることが多いからです。
倒産の間接的原因とは何か?
一方、倒産の「間接的原因」は、大きく3つに分類できます。
それは
・ シクミ(事業モデルの問題)
・ ヒト(人材の問題)
・ カネ(資金の問題)
です。それぞれ具体的に見ていきましょう。
事業モデルの問題
これは、要するにその会社に「売上や利益を上げることができない(儲けられない)何らかの原因」があるということです。
わたしが相談に対応したケースでは、
①事業体そのものが構造的に利益を上げられなくなるケース
②業種全体が不況業種に分類されてしまうような時代の変化
③競合の出現による競争の激化
④外注や下請けであれば、発注元との間の契約上の問題
⑤発注元からの受注量の低減
等、さまざまな課題に直面した企業を見てきましたが、こうした根本的な問題を解決しない限り、売上や利益は下がる一方です。
もし大胆にリストラしたとしてもそれにも限界があり、倒産に直結するような資金不足に直結しかねません。
人材の問題
人材の問題も、下記のようにその内容は多岐に渡ります。
①稼ぎ頭である有能な社員(例:営業部長や技術者)の退職
②必要最低限の人材採用ができない
③社内のトラブル発生(パワハラ、セクハラ、社内不倫、など)
④未払い残業代請求など退職者が起こすトラブル、等
「なぜ人材の問題が倒産の間接的問題になるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、①②は、売上を作る戦力(人材)がいないという状況です。
③は問題を起こした社員以外のメンバーの士気を低下させます。
④は経営者がリカバリーに時間や労力を割かれるのもありますが、会社の利益を数百万円単位で持っていかれるケースも多いのです。
結果として売上や利益が低減し、他の要因も合わさりながら「直接的原因たりうる資金不足」に移行することがままあります。
資金の問題
一時的かつ軽微な資金不足であればリカバリーできることも多いのですが、容易にリカバーできないような資金不足が起きた場合は注意が必要です。
わたしの経験では、下記のような資金不足が起きた時には、「倒産の直接的原因たりうる資金不足」に遠からず移行するケースが大変多いのです。
①従来は可能だった支払いの先延ばしを買掛先に断られる
②金融機関からの融資による調達が難しくなる
③金融機関が融資を引き揚げてしまう
④借入返済の条件変更(リスケジュール)依頼を金融機関に拒否される、等
①〜④はいずれも「ついこの間まではできていた」ことです。
がしかし、ある日突然「できません」と言われ、経営者はあわてふためくのです。
そして、ここに挙げた3つの間接的原因は、小規模零細企業であれば経営者がそのリカバリーに追われることになり、その間は事業運営に大きな影響を及ぼすことになります。
つまり、経営者がその問題の解決にかかりきりになってしまい、事業で売上を上げるエネルギーや時間が十分に取れなくなってしまうのです。
そしてこれもよくあることですが、一つ間接的問題が起きるとまた別の間接的な問題が発生します。
この悪循環にはまり、結果として売上や利益の大きな減少を招きます。
こうしたことから、倒産の間接的原因を抱えている企業は、『倒産のフロー』のページで述べた 【経営危機】不安定経営危機状態 に該当すると思われます。
“倒産の間接的原因”の根本的リカバリーが企業を健全化する
倒産回避の相談においては、実は「間接的原因があるか」「その問題はどのようなレベルか」の見極めが第一の関門となります。
この事実は、経営者の皆さんにとっては”意外”に映るかもしれません。
が 、実際の相談の場面でよくある、「経営者自身は事業継続は可能」と考えているケースでも、お話を伺いながら精査してみると、こうした間接的諸問題の根本解決を図ることが困難なケースが多く、結果として事業継続が難しいと判断せざるを得ない場合がほとんどなのです。
ですから上に掲げた間接的問題を抱えている経営者の皆さんに、ぜひ真剣に聞いていただきたいことがあります。
・間接的問題が一つ問題が生じたら、それを甘く見ないでください
・その根本に潜む問題を発見してください
・そして問題が大きくなる前に、また複数の間接的問題が発生する前に、根本的な解決を図ってください
間接的原因はどれも「そこまで大きな問題ではない」と、経営者に思われがちです。
しかしぜひ、”早期発見・早期解決”を図っていただきたいのです。
この世から倒産を減らすにはそれが一番の”根本的な解決”であると、25年以上、倒産せざるを得ない企業を間近で見てきたわたしは思うのです。
(初出:2013年12月23日、最終修正:2021年1月27日)
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