倒産に際して、社長は離婚するべきでしょうか? ~連帯保証人とは?
経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。
わたしは、経営危機コンサルタントを25年以上やっていますが、
根強く寄せられるご質問があります。
それは
「社長は離婚した方がいいのでしょうか?」
なのです。
しかし、
このご質問の背後で、
ご相談者様が本当に懸念されていることは、
●社長の家族(妻)も責任を問われるのか?
●離婚しないと妻の財産もとられるのか?
つまり、
[連帯保証]に関する問題なのです。
債務は、それが借入債務であれ支払い債務であれ、
債務の当事者(主債務者)が責任を負うものですが、
債務に連帯保証がついている場合、
その連帯保証人はその債務から解放されることはありません。
もし、夫である社長の債務に、
妻が連帯保証人になっている場合、
社長が払えなくなれば妻に支払い義務が生じてしまいます。
たとえ離婚しても、
元妻は連帯保証した債務から解放されることはありません。
もちろん連帯保証人が妻ではなく、
息子や娘、会社の役員や第三者であっても同じことです。
連帯保証をしていなければ、
会社の役員だろうが、社長の家族であろうが、
一切の債務責任は発生しません。
配偶者(妻)だからという理由だけで、
債務責任が生ずることは全くありません。
配偶者(妻)が
会社の役員であっても
社員であっても
連帯保証していなければ債務責任は一切生じません。
「(単なる)保証人」と「連帯保証人」の違い
これも、少し知識の整理が必要な言葉です。
通常「保証人」と呼んでいる言葉ですが、
厳密には2つあります。
「(単なる)保証人」
「(単なる)保証人」は、保証人が何人かいる場合には、債務責任に順番があり、主債務者(もしくは上位の保証人)が払えなければその下の人に移行します。
よって、下位の保証人に請求があっても、
「主債務者(もしくは上位の保証人)のところに行ってください」
と追い返すことができます。
最終的には主債務者(および上位の保証人)が破産でもしない限り、
差押えなどの債務責任が生じることはありません。
「連帯保証人」
[連帯保証人]は主債務者と同等の義務があります。
主債務者が払えないと連帯保証人にも支払い義務が生じますので、
連帯保証人の財産に差押え等が起こる可能性があります。
連帯保証人が何人いても同等の支払い義務が生じますので、
連帯保証人が集まって誰がどれほどの債務を負うか?
を協議して債権者の了解を取り付けることになります。
本来、連帯保証の設定は避けるべき
前述のように、連帯保証人は、
主たる債務者と同等の義務があり、
非常に重い責任を負うことになります。
ですので、
経営者は、妻(あるいは家族)や
第三者の連帯保証は決して設定すべきではない
と、わたしは思っております。
金融機関がリスクヘッジのために、
連帯保証人を求めてくるのは常套手段ですが、
それは必須条件ではないはずですので、
最後まではねつけるべきです。
また、連帯保証は、一度設定すると金融機関はなかなか解除してくれません。
解除するためには、最初に設定した連帯保証人以上の
連帯保証人の設定を求めてきますので、
ハナから応じないことが最も重要です。
以前、お目にかかった経営者は、
自宅不動産は奥さんの名義で、
なおかつご主人の会社の借入債務の
連帯保証は一切していませんでした。
このため、もしご主人の会社が倒産しても、
自宅不動産が無傷で残るばかりでなく、
奥さんも連帯債務を負うことなく破産から免れ、
更には奥さんの財産をもとにまた会社を興す、
ということも可能になります。
「連帯保証」と「離婚」は切り分けて考えていい
本来、連帯保証の問題と、離婚の問題は
切り分けて考えることができるのです。
が、こんなケースがありました。
倒産し、債権者に対しての
“誠意の見せ方”として、
「自分は離婚までしたのだから・・・」
と寛恕を請う“手法”として使った方もいらっしゃいました。
わたしにはいささか行き過ぎのようにも見えましたが、
債権者からの当たりはソフトだったとのことです。
ただし、別の意味で「離婚したい」のであれば、
当然のことながらこの限りではありません。
「実は以前から離婚を考えていました」」
そうおっしゃるご夫婦もおられました。
(初出:2013年9月30日、修正:2021年1月24日)
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