倒産者の再起を阻むふたつの問題点・その一 債権者を残すこと
倒産する者だって人だから、倒産の後も生きていく。
会社は事業停止すれば死んでしまうようなものだが、人はそうはいかない。
あたりまえのことだが、倒産後も経営者は生きていくのだ。
しかし、倒産者の再起は非常に難しいのが現実だ。
倒産とは、債権者を残して事業停止すること。
この言葉の中に再起の難しさが含まれている。
・ひとつは、債権者(被害者)を残してしまうことだ。
・もうひとつは、事業を停止することで経済活動から離れること(収入がなくなること)だ。
*倒産者の再起を阻むふたつの問題点・その二 事業停止して収入がなくなること
もご参照ください。
債権者を残すことの問題
倒産は、倒産それだけでは犯罪ではない。
単に会社という単位の経済的な破綻だ。
しかし、借入れであれ、未払いであれ、債務を残してしまうことは、“約束が守れなかった”という事実からは離れられない。
具体的には、
・税金(国民の義務とされている)
・社会保険
・金融債務(金融機関からの融資など)
・恩借(家族友人知人からの出資や借入れ)
・買掛金(外注下請け仕入などの原価性の費用)
・一般管理費(光熱水費、賃借、など)
・さらには労働債権(社員の給与や退職金など)
などなど。
これらの会社の債務は、会社が事業を停止してしまうと債務を負っている会社がなくなってしまうので、債権者は請求先そのものがなくなることになる。
とはいえ、現実的には発注したのは会社だが発注した者は存在する。
よって、発注した者に「約束を守れ」、「約束を守らないのは契約違反だ」、「意図してそれを行ったのであれば詐欺だ」と追及されることが起る。
そこには法的な債務責任はないのだが、人情としては発注した者はつらい立場に立たされる。
それらの債権者問題を解決するために、地方裁判所に申し立てて、破産管財人による処理を行う[法人の破産]([管財事件]と[少額管財])という法的処理の方法がある。
費用はかかるが、破産管財人によって会社が犯した約束違反に違法性がないことを明らかにしてもらう効果は絶大なものがある。
すなわち、債権者は納得せざるを得ないという決着を迎えることができるのだ。
法的処理によらない[任意整理]も同様の決着の効果をもたらす。
これらの会社の債務に代表者などの連帯保証がついていれば、またそれは代表者個人の問題として[個人の破産]の手続きをとれば同じような決着をもたらすことになる。
しかしながら、債権者から「約束を守れ」、「約束を守らないのは契約違反だ」「意図してそれを行ったのであれば詐欺だ」と罵られた事実は残る。心理的なプレッシャーとして残る。
それは、事実だからだ。
法的な処理ができて、「犯罪ではない」、「もうこだわることはない」といくら言い聞かせようとしても、それらの重圧は倒産者の心の奥に深く傷跡を残す。
これには個人差があって、タフな方はそれほどの重圧を感じないですごせるようだが、誠実な方はそのプレッシャーでつぶされていくことがよくある。
もし、[法人の破産]や[任意整理]を行わないとどうなるか。
連帯保証をしていなければ、代表者個人や会社の役員、社員に債務責任が及ぶことはないのだが、倒産処理をうやむやにしていると、債権者から「約束を守れ」、「約束を守らないのは契約違反だ」「意図してそれを行ったのであれば詐欺だ」と罵られることになる。
債権者を訪ねて(あるいは集めて)事情説明をしても(それを文書でしたとしても)、債権者は納得はしてくれないものだ。
分割で返済(支払い)を求められたりすることが多い。
せめて弁護士に同席していただき、債権者に対して代表者など個人には債務責任はないことを説明して深く頭を垂れるなどすべきだが、それでも債権者が納得することは少ないものだ。
そのようにうやむやな処理は、[放置逃亡]という形になって代表者の連帯保証のある債務は[時効]まで債務責任は消えないものなのだ。
会社の約束の債務は五年、個人になると最大十年の時効となる。
さらには、こうした債権者対応の心理的な重圧が倒産者の再起の障害になるのだ。
そうなってしまうのは倒産の局面が【切迫倒産】になるからに他ならない。
トラブルを残しそうな債権者は倒産前に解決しておき、金融機関など連鎖倒産のおそれのない債権者だけ残すような【予知倒産】の方法が選べれば、債務を残してしまう重圧は少しは解消できるものだ。
*【切迫倒産】と【予知倒産】倒産の二つの様相 を参照されたい。
そのための方法は、倒産の“早期発見”であり、“早期対応”以外にはないのだ。
時間があれば、方法論も発見でき、対応方法も自ずと備わってくる。
当事務所は、倒産者の再生再起のお手伝いをしています。
相談に来ていただければ、対応策は発見できるものと思います。
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