地方都市の少額管財環境

小規模零細企業や個人事業の倒産は、[少額管財]で処理すべきだとかねがね申し上げてきた。

現実はどのようになっているのか。

[少額管財]は、東京地裁によって開発された法人の破産(及び代表者の個人破産)の運用方法で、順次地方都市の地裁でも採用されるような方針だった。

はじめは、東京地裁だけが受理していた運用方法だった。そしてどの地方からの申立てであれ、ほぼ無条件で東京地裁は受理したものだが、今はその条件がかなり厳しくなってしまった。
詳しくは、【地方都市の倒産処理(弁護士)環境】を参照されたい。

現実的には、地方都市の[少額管財]は、思うように進んでいないようだ。

最近もいくつかの地方都市の地裁に、「少額管財の運用はあるか」と弁護士が問合せたところ、
・「今は対応していない」
・「少額管財はないが、簡易な案件は“少額”で受け付けている」
という回答があった。
どうやら少額管財の破産管財人を引き受ける弁護士がいない(少ない)ので、地裁としては受理しきれないのだろう。

東京と地方都市の弁護士環境は大いに違うのだ。
東京は法人も多く、法人の破産の案件も多い。

一方、地方都市は法人も少なく、法人の破産も少ないものだ。
(少額管財に限らず)破産の申立ては申立て代理人の弁護士がいればできるが、地裁は破産申し立てを受けた段階で破産管財人を決めなければ受理はできないのだ(破産管財人は弁護士でなければできない)。

[少額管財]は予納金が20万円となっている(東京地裁の場合)。
この予納金が破産管財人の報酬となるので、破産のノウハウもない地方都市の弁護士は20万円では「できない」と受けないことが多いようなのだ。

ちなみに、少額管財ではない管財事件(特定管財)の場合の予納金は、最低ランクの負債総額5,000万円未満で法人が50万円、代表者個人が20万円と、合計70万円もかかってしまう(東京地裁の場合)。

こうした背景から、[少額管財]の破産申立てをしても破産管財人が決まらなくて受理できずにいるケースも現実的には起こっているのだ。
そのために、東京地裁で受理できる条件を整えて東京地裁の申立てをするケースも増えてきた。

以下の条件が満たされていれば、東京地裁で受理される可能性が高い。
その条件は以下の三つ。

[一]申立て会社の本店所在地が東京であるか、代表者の居住地が東京であること。
・この条件があるために本店所在地の東京への移転登記を行ったり、代表者の住民票を東京に移したりすることがある。

[二]債権者にその地方の事業者が多く含まれていないこと。
・これは債権者集会は東京で開かれるので、そのために上京させるリスクを債権者に負わせないようにする配慮と思われる。
・とくに[個人事業者]が多く含まれていると適用されないで、「その地方裁判所で申し立てしなさい」と指導されるようである。
・そうならないためには、[申立て前処理]でその地方の個人事業者への支払いを完了しておく必要がある。

[三] 会社の賃貸契約などがすでに解除されていること。
・会社がなした契約のうち事業者などの賃貸契約が解除されていること。

このごろは、このような地方都市からの破産申立て相談(少額管財相談)のケースがたいへん増えている。

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