もっとも安価な倒産処理方法とは何か
経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。
倒産処理を決意された経営者から「倒産処理(会社の破綻処理)を、できるだけ少ない費用でやり遂げる方法はありませんか?本当にお金がないのです」というご相談をたまに受けることがあります。
そこで、わたしが考えてみた方法をお伝えしようと思います。
経営者にとってのプレッシャーを考えると決して推奨するわけではありませんが、「不可能ではない」という位置付けでお読みください。
「倒産処理をやり遂げる」とはどういうことか?
まず何をもって「倒産処理をやり遂げる」=「完遂」とするかを考えてみましょう。
これは実はなかなか難しい問題です。
そもそも「倒産」とは、
「資金がなくなり、債務(支払先や借入先)を残して事業を停止すること」をいいます。
債権者(被害者)を出して事業を終わらせる(終わらさざるを得ない)ことが「倒産」なのですから、
債権者の了承・同意が得られること
(いやいやであっても…)
を、「倒産処理の完遂の条件」と位置づけたいと思います。
【放置・逃亡】は絶対お勧めしません
もし、債権者の了承・同意をも無視するならば、会社が事業を止め決算もしなければ、会社の登記は抹消されてしまい、会社そのものがなくなってしまうのですから、何の処理もせず【放置】すればそれで済むと言えなくもありません。
しかし【放置】は、経営者のその後の再起が非常に困難になり、また債権の時効までの生活があまりにも厳しすぎるため、わたしは絶対に勧めることができません。
*【放置・逃亡】に関する詳しいブログ記事はこちらをお読みください。
また、【放置・逃亡】以外の方法も検討してみましょう。
「法的処理(法人の破産)」は、地裁への予納金や弁護士費用がかかりますから排除せざるを得ません。
であれば、「私的処理(任意整理)」にならざるを得ませんが、一切費用をかけないとするならば、代理人の弁護士も雇えなくなってしまいます。
ではどうしたらいいのでしょうか。
もっとも安価な倒産処理方法としての「倒産説明会」
債権者の了承・同意を得るためのもっとも安価な方法は、倒産会社の経営者が債権者を一堂に会して説明会(倒産説明会)を行うことでしょう。
説明会の場で債権者の了承・同意が得られれば、倒産処理(会社の破綻処理)は完遂することができる、という考え方です。
(倒産会社の経営者が債権者の会社を一社一社訪ねて説明する方法も考えられなくはありませんが、その場合は債権者の総意を債権者同士が確認することが困難になりますから不可です)
「倒産説明会」では以下のことを経営者自らが説明します。
①事業が継続できなくなった事情を説明する
②会社の財務内容(破綻時の会社の試算表)を説明する
・会社の債務から会社の財産を差し引いて、最終債務金額を明らかにする
③配当(金額と比率)
・配当できる金額があれば、その金額と比率を説明する
④経営者の処遇
・経営者の債務(連帯保証関係)の説明、自己破産をするかどうかを説明する
⑤質疑に対応する
・どのような質問にも答えなければならない
また、以下の資料をあらかじめ用意しておくと良いでしょう。
・決算報告書
・直前の試算表
・債務一覧 など
「倒産説明会」にて債権者に了承していただく事項
そして最終的に債権者に了承していただく事項は以下のようになります。
・事業継続ができなくなったこと
・約束どおりの支払いや返済ができなくなったこと
・会社の財産を整理した結果、配当はこうなる(あるいは配当はできなくなる)
・(配当できるならば)支払い方法はこうなる
この事項を記した書面に、債権者から署名捺印をもらいます。
(この処理方法は[任意整理]の変形の一つといえましょう)
この方法で債権者の了承・同意が得られれば、”倒産処理は完遂できた”と言えるでしょう。
このときかかる費用は、書類の印刷費用や、説明会の会場費だけで済みます。
「倒産説明会」の問題点、やはり【少額管財】での処理をお勧めする
ただ、この処理方法があり得るのは、倒産会社の経営者と債権者との信頼関係が相当厚い場合のみだと思われます。
また、倒産会社の代表者は”当事者能力がなくなった者”であり、そのような者がこうした機会を持つことに果たして債権者は同意するでしょうか。
さらに、言うまでもないことですが、債権者からの了承・同意が得られる保証はまったくありません。
債権者の同意を得やすくするためには代理人の弁護士が有効なのですから、このような場には弁護士の同席が望ましいとわたしは考えますが、そうすると一般的な[任意整理]での処理方法ですし、弁護士費用がかかることになってしまいます。
さて、ここまでご説明してきて改めて振り返りますと、倒産社長ひとりでこうした説明会を行うのは不可能ではありませんが、説明会では誰も倒産社長を守ってくれません。すべてを自分で対応しなければなりません。
そのプレッシャーを考えるととても現実的とは思えません。「心理的な安心感」や「費やす労力」という面からしても。
「安価である」ということだけでなく、債権者の同意を得るという大きな目標を果たすためには、やはりわたしが何度も繰り返しお伝えしているように、予納金が少なくて済む法的な破産処理である
【少額管財】での倒産処理をお勧めしたいと思います。
[倒産処理の現実=倒産処理には費用がかかる〜放置逃亡せず再起するために]という記事もぜひお読みください。
(初出:2012年12月4日、最終修正:2021年2月4日)
経営相談お申込み・お問合せ03-5337-405724時間365日いつでも受付
経営相談お申込み・お問合せ