倒産(法人の破産)の[Xデー]、三つのステップ 【改定】

[倒産の日]を指す[Xデー]については以下の要素があるが、これらはすべて〝同じ日〝でなければならないとは限らないのである。

①事業を止める日
②代理人(弁護士)介入(債権者への連絡) の日
③地方裁判所への破産の申し立ての日

むしろ同じ日であることのほうが異例だ。一般的には同日だと思われていることが多いようだが、それは大いなる誤解だ。

① 事業を止める日

①事業を止める日(止めざるを得ない日)とは、不渡り手形を出せばその日がそうだし、給与が払えなくなった日、買掛金が支払えなくなった日、など、どのようなきっかけであれ、事業活動が継続できなくなる日(事業活動を停止する日)をいう。
わたしが[Xデー]という場合は、この①事業を止める日を指すことがほとんどだ。

事業を止めて代理人(弁護士)が介入するまでの期間は、倒産会社は事業は止めただけで、何も手を打っていない段階になる。
倒産会社が債権者に連絡しなければ、債権者は事業停止も知らないことになるこの期間は、非常に中途半端な期間といえる。

この期間に売掛金の入金を受け付けて、それが最大化したところで②のステップに移行するようなことも充分にあり得ることだ。
いわゆる[放置逃亡]はこの期間が継続していることになる。

② 代理人(弁護士)介入の日

代理人(弁護士)介入とは、倒産会社が事業を止めてスタックした段階から、債権者に会社の終戦処理を始める連絡をすることを意味している。

なぜ代理人が弁護士かというと、破産免責の申し立てなどの代理権は(弁護士法によって)弁護士にしか認められていないため、(債務が払えないのだから)当事者能力を失った経営者が選ぶ代理人は弁護士以外にはありえないのである。

債権者である金融機関などは、当事者よりも事務能力に優れた代理人の弁護士との交渉を必ず求めてくる。
すなわち、委任状を持った弁護士としか交渉しないのだ。

代理人の介入とは、すべての債権者に対して[介入通知]を出すことを意味し、これ以降の債権債務の管理などは一切この代理人である弁護士のハンドリング下になる。

代理人が決まると、すべての債権者はこの代理人と対応しなければならなくなる(直接の債務者である経営者にはコンタクトできなくなる)。
これで経営者は債権者とは(当事者能力がなくなったのだから)対応できなくなるので、経営者にとってはずいぶんとストレスが軽減できるようになる。

その反面、代理人の弁護士は債権者からの連絡を受けて大変忙しくなる。
この段階の弁護士事務所にいたことがあるが、ヤミ金からマチ金、銀行やら債権者やら、社員や税務署に社会保険事務所まで、ものすごい量の電話がかかってくる。

時には弁護士事務所に乗り込んでくる債権者までいる。
余談だがこの段階の対応を嫌がる弁護士も多く、だから倒産(破産)はやりたくない、といっている弁護士もいた。

弁護士の介入以降のステップとしては、法的処理である[法人の破産]になるのが一般的だが、それ以外に私的処理である[任意整理]になることもあり得るし、事業の継続を目指す[民事再生法]の適用申請になることもある。

③ 地方裁判所への破産の申し立ての日

③破産の申し立てとは、地方裁判所に[法人の破産]を申し立てる段階を指す。
すべての債権債務が確定してから(回収にあらず)申し立てすることが一般的だが、それらがまだとっちらかっている段階での申し立てもあり得る。

この段階は、地裁から[破産管財人]の指名を促すことでもあり(すぐに任命されるとは限らない。地方都市などでは決まるまで半年なんていうこともある)、要するにすべての処理は地裁(の指名した破産管財人)の支配下になることを意味している。

①事業を止める日から③地方裁判所への破産の申し立てまで、どれほどの時間がかかるのかという質問もよく受ける。

急げば①の翌日に③にいたることも不可能ではない。そのためには徹夜で申し立て資料を作成しなければならなくなるが。
早くしたいニーズがある場合は、要するに早く[免責]を得て社会復帰したいということだろうが、急ぐということは早く地裁の(破産管財人の)支配下になることなので、急ぐよりもある程度自由度のあるうちに処理できる範囲を広げておいたほうがいい、とわたしは考えている。

処分すべき財産があるような場合には、この間が半年以上かかったケースもある。

ちなみに、[少額管財]を地裁が受け入れる条件として、③の申立て前に代理人の弁護士が〝申立て前処理〝をしっかりやって、破産管財人の作業量が少なくなっていることがあげられる。
逆に言えば、その〝申立て前処理〝ができていないと[少額管財]を受け付けてくれないことはよくあることだ。

本来であれば、このような[Xデーの三つのステップ]をしっかり把握してなだれ込まなければならないのだが、なかなかそうなってはいない。

それができるには、〝有能な弁護士〝にめぐまれなければならない。
しかし実際はろくに説明もしない(運用についてわかっていないので説明できないのだが)弁護士ばかりなのだ。

倒産の事態に至った場合、弁護士とはこのようなことを徹底的に話し合って、了解した上で委任しなければならないことは、しっかりと心しておいていただきたい。

申立て代理人の弁護士が、第一~第二段階で、[少額管財]が適用されるような処理(申立て代理人の弁護士による申立て前処理)をしてくれるかどうか、なのである。
しかし現実には〝役立たずの弁護士〝は多いので、少額管財が認められず多額の予納金を要するケースも多い。
その予納金の金額(小規模の場合でも作業量が多いと数百万円ということもある)を聞かされて放置逃亡に至ることもあるのだ。

倒産処理の相談に弁護士事務所を訪れて、[少額管財]の適用が認められなかったような時は、当事務所に相談していただきたい。
少額管財が可能になるような申立て前処理ができる弁護士はいるのだから。

わたしは放置逃亡だけはどうしても避けたい、と願っている。

 

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