計画倒産は犯罪なのか
本記事は才藤が執筆しております。
経営危機に陥った経営者からのご質問が非常に多い【計画倒産】について、2回に分けて記します。次回は以下の記事をご覧ください。
計画倒産と「計画的倒産」について
本記事は才藤が執筆しております。 経営危機に陥った経営者からのご質問が非常に多い【計画倒産】について、2回に分けて記します。前回は以下の記事をご覧ください。 いったい「計画倒産」と「計画的倒産」は何がどう違 […]
いったい計画倒産とは何なのでしょうか? そして、何が問題なのでしょうか?
結論から申し上げますと、刑法には【計画倒産罪】というものは存在しません。
そして、計画倒産という言葉も、厳密には定義されていないようです。
現実的には、計画倒産という言葉と紛らわしいのですが、「計画的倒産」という、もう一つの意味の異なる言葉があります。
この二つの違いは詳しくは、【計画倒産】と【計画的倒産】についてに詳しく記しましたが、ここでも簡単に説明します。
【計画倒産】と【計画的倒産】の違い
弁護士などに聞いたところ、下記のような違いがあります。
◆計画倒産とは?
計画的に詐取しようという意思を持って会社を設立して倒産を迎えることで、それは詐欺に当たる犯罪だ、といわれます。一般的には、
- 詐取しようという意図をもって会社を設立し、その会社が買掛け(仕入れ)をしてその買掛商品を換金して倒産するというような手口
あるいは、
- 倒産が判っていながら、金融機関から融資を受け一切返却しないうちに倒産するような手口
- 同様に、倒産が判っていながら仕入れを起こし転売してしまうような手口
で、これらはいかにも詐欺と認められるでしょう。
◆計画的倒産とは?
事業が悪化して倒産も視野に入れながらも、まだ判断に迷っているような場合に、
- 会社にある現預金を、優先的に処理したい債務に充てる
- 会社の資産を換金して、優先的に処理したい債務に充てる
など、倒産の可能性を感じながらもまだ迷っている段階で、ある程度の計画性を持って会社の債務整理をすることを指します。
健全な経営者だからこそ、【計画的倒産】を検討する
前述の計画的倒産は、経営判断としては当然のことです。すなわち犯罪としての計画倒産(すなわち[詐欺])ではなく、経営者の健全な判断によるものが計画的倒産と言うべきであろうと考えられます。経営者としては、社員の給与などの労働債権を残したまま、あるいは外注や下請け会社が連鎖倒産する可能性が高い状況で倒産を迎えることは、どうしても避けたいに違いありません。
それは経営者として至極まっとうな考え方です。ただし、この計画的倒産を進めるにあたり、
- 借入をしてそれを隠蔽する
- 仕入れをしてそれを換金して隠蔽する
ことは、禁じられた行為と言われます。いわゆる、詐害行為と呼ばれる行為です。
詐害行為(さがいこうい)とは
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また、「特定の借入先に返済」したり「特定の買掛先に支払い」したりすると偏頗弁済と判断されることがあります。
偏頗弁済(へんぱべんさい)とは
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このように詐害行為や偏頗弁済という事態に陥ると、破産申立後に破産管財人によって詐害行為取消権を発動される可能性が高く、そうなると弁済しなければならなくなります。(ただし運用を見ていると、弁済すれば詐欺にはならないようです)
犯罪になるか否かの分岐点
では、犯罪になるかならないか、あるいは詐害行為や偏頗弁済になるかならないかの分岐点はどこにあるのでしょうか。それは倒産の判断をいつ決めたかによるようです。つまり、
- 倒産の意思を決めた後に、「支払い」や「返済」すれば、「アウト」
- 倒産の意思を決める前なら、「支払い」や「返済」しても、「セーフ」
なのです。ただ、これは現実的には難しい問題をはらんでいます。
なぜなら、倒産の最後の引き金となるのは資金不足、すなわち、
- 給与が払えない
- 買掛金が払えない
- 借入金の返済ができない
- 税金が払えない
などですが、経営者は、資金不足によって起こる倒産を回避するために、資金繰りや買掛先など支払先との交渉などに奔走するものです。それがまだ切迫していない段階では、借入金(特に恩借)の返済や、買掛金などの支払いは普通に行われることです。その資金繰りのプロセスで、
- 融資が不調になったり
- 買掛先との交渉が不調になったり
- 差押えを受けたり
して、倒産に至ることはよく起こるのですから、「経営者が倒産の意思をいつ決めたか」の線引きをするのは現実問題として大変難しいのです。
実際に判断するのは破産管財人
詐欺に当たるかどうか、あるいは詐害行為や偏頗弁済になるかどうかは、実は破産管財人の裁量次第です。
わたしたちが相談を受けるケースでは、この部分のアドバイス、すなわち避けられない倒産が予知された段階から、詐害行為にならないぎりぎりのところで最後に残った資金の有効な活用使途のアドバイスが欠かせません。
わたしたちが知っている「倒産事案を多くこなしている有能な弁護士」は、そのぎりぎりの見極めに長けています。
弁護士によっては、詐害行為や偏頗弁済になる可能性があると見なしただけで受任を断ることが多くあるのが現状なのです。
これはひとえに、その方が相談に行った弁護士の経験量が足りなくて、実際の破産の運用を知らないからだと考えられます。
破産申立て代理人弁護士の選び方・5つの条件〜経営者の立場に立ってくれる弁護士を選ぶ
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当事務所では、これまで1000件を超えるコンサルテーションの結果、おおよそのガイドラインは把握できていますのでご安心ください。
では、裁判所や破産管財人に、詐害行為や偏頗弁済と認定されてしまったらどうなるのでしょうか。よほど計画的で悪質であると見なされない限り、指摘された部分だけ返金すれば、破産プロセスに支障はきたさないものです。ただし、その兼ね合いは、百の倒産があれば百の運用があり、一概には申し上げられないものであることはご理解ください。
このページに来られた経営者の皆さんへ
ここまで読まれた方は、高い確率で「倒産」の二文字が頭から離れないほどに経営危機に陥っている方でしょう。
そしてご自分がいま考えていることや計画していることが、上記②の部分で述べた、犯罪としての計画倒産(すなわち詐欺)に該当しないかと、内心ヒヤヒヤしながら日々を過ごしておられることでしょう。
しかしながら「何らかの計画をしよう」という程度には、時間があるに違いないはずです。
(おそらく今月末に不渡りが出そうという方はこのページを読んでいないでしょう)
倒産処理をする上で、時間は大変重要です。
もし経営破綻まで数ヶ月〜半年以上時間があるのでしたら、詐害行為等とならずに取りうる選択肢はたくさんあるのです。わたくしのケースでは1年以上の時間が掛かりましましたが、金融機関の債務だけを残して終えることが出来ました。
当事務所は【計画的倒産】にいかに対応しているか
当事務所が関わった1000件以上の案件には、詐欺に認定されたものはありません。事前に知らされた範囲での詐害行為や偏頗弁済も皆無です。個人の破産の段階で免責にならなかった例も皆無です。(ただし、事前に知らされないで返済した個人的な借入れ(恩借)が、破産管財人によって返済を求められたことはありました。)
当事務所は、
- 相談に来られた方の利益を最大化する(不利益に陥らないようにする)こと
- 倒産後も経営者に再起・再建の道を見出していただくこと
を最も重視しています。いままで、
- 店舗や事業所をリースバックなどの手法で確保して、倒産後も事業が継続できたケース
- 偏頗弁済に抵触しそうだったが、抵触することなくクリアできたケース
- 以前相談した弁護士に「詐害行為だ」と指摘されていたが、クリアできたケース
- 倒産後、時効までの間をうまく過ごしきったケース
- 数千万円の再起費用を確保して倒産処理を終わらせたケース
などを、合法的に実現できた方がたくさんいらっしゃいます。これらは、針に糸を通すような綿密な計画を立てて実現しなければならないことですが、決して不可能なことではありません。
申立て代理人の弁護士の紹介を求められるときには、上に述べたような配慮ができる弁護士の先生にお願いするようにしています。
破産申立て代理人弁護士のご紹介〜経営者にとってのメリットや安心感を大事にします
経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。 倒産を決意された経営者からのご依頼が非常に多いのが【破産の申立て代理人の弁護士を紹介してほしい】というご依頼です。 もちろん、破産処理に長けた有能な弁護士をご紹介することは […]
そのような弁護士を見つけることは非常に難しいです。当事務所にご相談に来ていただければ可能な限りお力になれると思います。
どうか一日も早くご相談にいらしてください。
執筆: 才藤
(初出2021年12月27日、修正2024年8月1日)
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