倒産と差押え(仮差押え)
経営危機に陥った経営者が大変気にされるテーマ【差押え】について。
※一般的には「差し押さえ」と表記されることが多いのですが、法律上の処分としては「差押え」と表記されます。本記事では、「差押え」で記載します。
「差押え」の誤ったイメージ
倒産による「差押え」にはこんなイメージをお持ちではないでしょうか?
”ある日突然、執行官が家にやってきて、
家財道具に“「差押」と書かれた赤紙がべたべた貼られる・・・”
・・・
実は、
これは違います。
かなり以前には実際にあったそうですが、
こうした風聞は、一種の【都市伝説】かもしれません。
今日は、この「差押え」について説明します。
ただちに差押えが実行される可能性のある「債権」とは?
すぐに実行されるのは、
優先債権である
【税金】と【社会保険】
です。
これらの債務は、最終通告があっても何もしないと実行します。
主に会社の売掛先の売掛金や会社の預貯金が差押えられます。
ただし、それらがあれば、のことですが。
それらは、決算書に記載されていることが多く、それで債権者は実行するのです。
なければ債権者は空振りになるだけです。
また、会社名義の賃借の保証金や車両なども差押えられることがあります。
その他、会社の器具備品や在庫などの[動産]も差押えられる可能性がありますが、
税務署や社会保険庁とトラブルになっていない段階では、
ほとんど起こらないようです。
動産執行は債権者の生活権を侵すため、なかなか実行しなくなったのです。
何の前触れもなく差押えになるようなことはなく、
必ず何回かの催告があり最終通告(社会保険の場合には[差押予告通知書])が
あっても対応しない場合に差押えが実行されます。
当事務所では、こうした段階で相談を受けることがあります。
うかがうと、弁護士に相談しても埒があかないことが多いからのようです・
その他の債権は?
銀行などの【金融債務】やリース、ローンなどは、
(根)抵当権を実行するか、
連帯保証人のところに取り立てに行きますので、
ただちに動産などの差押えはありません。
その他、事業上の買掛金や外注費などの【一般債権者】は、
取引契約に動産などの抵当権設定があったり、売掛金を差し出すような契約があれば別ですが、
そのような契約は小規模零細企業の場合にはないでしょうから、一般的には差押えはできません。
ただし、既に裁判沙汰になっていて【判決】がとられていたり、
【公正証書】がとられている場合は差押えはありえますが、
そうしたことがなければ、一般債権者が会社や社長の財産を差押えることはできません。
会社の債務に、社長(代表者)個人の自宅に根抵当権を設定したり、連帯保証があれば、
社長個人の財産が差押えられる可能性がありますが、
動産が差押えられるようなことは、実際にはあまり耳にしたことはありません。
「差押え」についてのまとめ
つまり、差押えは、
【税金】や【社会保険】の滞納があれば起こりえますが、
それ以外の一般債務に関しては裁判で【判決】がでていたり、
【公正証書】がとられていなければ起き得ない
と考えていいでしょう。
次に、仮の差押え=仮差押えについて。
【仮差押え】の可能性は?
仮差押えとは
これは債権者が地方裁判所に、
「債権があるので債務者の財産を差押えをしたい」
と申し出て認められれば、
【仮差押え】が実行されるというものとです。
具体的には、債権者が弁護士に委任して仮差押えの申立てをします。
一般人ではできないと思っていいでしょう。
費用としては、債権金額の20~30%程度の供託金と、弁護士費用(数十万~百万円程度)が必要となります。
差押えられる財産としては、預金口座、不動産、売掛金などが一般的です。
これも、家財道具なりの動産が対象になることは、見たことがありません。
ただし、この【仮差押え】は、
仮差押えを受けた財産を債権者が動かしたり、使うことはできず、
処分できなくなるだけの効力しかありません。
その上で、交渉で決着をつけるか、裁判に持ち込むことになります。
ですが、「仮」と言えども、
債務者である経営者は、
財産が使えなくなるので、ダメージは大きく、
会社の売掛金や銀行の口座が仮差押えを受けて
資金不足になり、倒産に至ったケースはよくあります。
【仮差押え】が起きるか起きないか、を予測することは難しいです。
債権者にとっては、当然の権利ですから、起こりうることだと
想定しておいた方がいいでしょう。
「仮差押え」についてのまとめ
ただし、前述のように、
債権者は手続きをするだけで費用がかかる上、
仮差押えができたところで、その財産を使えるわけではないので、
一般的にはあまり起こることではありません。
債権者と債務者との信頼関係が壊れているか(怒らせている)、
訴訟慣れしている債権者ならありえるでしょうが。
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