倒産の実録(才藤 投稿)
Xデー目前に経営者は何を思うのか?
ある依頼人と最終的な打合せでの出来事。
休日、従業員や会社関係者が誰もいない事務所で行った。
※代理人になる弁護士も同席。
業種は書籍関係の配達業、解体業、健康食品の代理店など事業の多角化を図ってきた。
関東圏内が商圏で、営業所は東京都内の郊外にあり、従業員数10人規模、年商は約1億3千万前後で
営業利益が出せず損失が出ている状態が数年続いていた。
依頼人は学生時代から続けていたアルバイトから配達業に携わり独立、ここまで会社を切り盛りして
きた苦労人である。
コロナ融資を利用して何とか資金を繋いできたが、書籍デジタル化の流れもありに紙書籍の出版量
減少に伴う本業の売上減とコロナ禍のダメージをカバーできる程の業績回復が見込めない、そしてコ
ロナ融資の支払い再開となると慢性的な赤字に陥ることが明白、事実上は債務超過ということも決定
打となった案件だ。
Xデーが目前に迫ってきて実感が湧いてきたのか、少し落ち着かない様子。本人は緊張してきたと、
あるがままの心境を私に語ってきた。話を聞いているうちに、少し落ち着いてきたようだ。
私も経験からその気持ちは痛いほどよく分かる。
Xデー前日と当日朝が最もストレスを感じる時かもしれません。
打合せが進む。
当日のスケージュール、何時に全従業員を集めて、社長から今日で会社が倒産することを告げる、そ
の後は弁護士が倒産に至るまでの簡単な経緯と事務的(会社都合による解雇、ハローワークへの手続
き、社会保険等々)なお知らせをして、解雇予告手当、債権者対応、債権者リストの確認、リース業者との対応、
事務所の現状復旧の手配、住居の事、売掛入金の予定、その他、、、今後の展望等、もれなく事細か
に確認して2時間ぐらいの打合せが終わる。
その後、お茶をしながら世間話をしてそろそろ終わりの頃に依頼人から自責の念とも言える話を聞い
た。それは、「会社を始めた時は明るい未来を描いて、家族を持ち豊かな生活を夢見て我武者羅に働
いてきた。まさかこうなるとは夢にも思わなかったと。自分に経営能力が足りなかった、自分が悪い
のだと。自分にすべての責任がある」、と自分を責めたのでした。
私からは慰めにもならないだが、「どうかそれ以上自分を責めないください、これから先の事、家族
の事、将来のことを前向きに一緒に考えましょう」としか言葉のかけようがなかった。その後も少し
雑談していくと時間と共に表情も声も明るくなり、落ち着いたようだ。
”話を聞いてくれる相談相手が居て助かった”
この日、お別れの際に依頼人から言われた言葉だった。
その日から数日後、Xデーをむかえた。一部の従業員からはいろいろと言われ詰め寄られたが、経験
のある弁護士に上手く対応してもらい、それ以外は何も問題なくXデーは過ぎていった。
❝会社を作るのはかんたんだが、終わらせるのはたいへんだ❞
商売を続けるのも大変であることは承知の上で申し上げるが、終わらせる方が大変なのではないかと
つくづく思う。これは自身の経験から感じたことでもあります。
過去に成功体験がある経営者はどうしても、まだ何とかなると楽観的に考える傾向が強くようだ。こ
の気持ち、痛いほど分かります。
終わらせる決断 ≒ 再期するためのリセット
早すぎず、遅すぎず、見極めが難しい決断です。
私共が早目の相談を勧める所以はそこにもあります。
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