【改定】 倒産処理を甘く見るな (才藤 投稿)
事業経営者が事業の継続ができなくなり、刀折れ矢尽きて倒産するのは、死んでしまいたいほど悔しいものだ。
思い出したくもないが、わたしにも同様の経験があります。
【倒産】とは債務が払えなくなり事業が継続できなくなる状態をいいます。
そこで最後の勇気を振り絞って、倒産処理をしようとしてネットで調べたり弁護士に相談したりすると、思った以上に費用が掛かることに驚き、失意の中で処理をしようとしている気持に追い打ちをかけるような、絶望的な思いに陥れられることになる。
よって、“放置”や“逃亡”のようなことが起こり得るのだが、ちゃんと立ち止まって倒産処理をしないと、再起に大きな影響が出てくる。
【倒産処理の大原則】
倒産処理は、会社の財産をすべて換金し債務(未払、借入)に充てる(配当)ことだ。これが大原則。
その際、債務のほうが大きくて債権者を出してしまうことが避けられず、それこそが[倒産]となる。
当然100%の配当はあり得ない。配当が0%ということもよくあることだ。
この配当を債権者の誰からも苦情が出ないように処理するのは、だれが考えても至難の業だ。
さらには、事業所の撤去など、会社のなした契約をすべて解除することも必要になる。
そこで、その処理を地方裁判所に申し出て破産管財人によって処理してもらうのが[法的処理]であり、[法人の破産]処理となる。
その法人の破産と同じことを弁護士に頼んで[私的処理]することが[任意整理]と呼ばれる手法だ。
どちらにしても、かなりの時間も費用も人的エネルギーもかかる。
【倒産処理の費用】
そのための費用は当然のことながら倒産者が負担しなければならない。
それにはかなりの費用が掛かるのだ。
[法的処理の費用]
[法人の破産]には、[管財事件]と呼ばれるものと、[少額管財]の二種類がある。
[管財事件]と呼ばれるもの(これが法人の破産の標準的処理方法)は、債務総額によって違いのある[予納金]を納めなければならないことになっている。
この予納金とは、地裁に任命される破産管財人の費用と考えていいだろう。破産管財人の費用が別途請求されるようなことはない。
最低(債務総額5,000万円以下)でも、[法人分70万円]と[代表者個人分50万円]。[合計120万円]必要になる。
※各地方裁判所でこれら予納金額が異なる場合があるので目安として捉えていただきたい。
この予納金は債務総額によって定められている。財産との差し引きではないので注意が必要だ。
簡易に処理できる場合は[少額管財]が適用される。
この少額管財でも[20万円(法人と代表者個人)の予納金+切手代等は別途]と実費(数万円)が必要となる。
※各地方裁判所で運用しているかどうか確認が必要となる。
わたしは、小規模零細企業の倒産処理は、すべからくこの[少額管財]を目指すべし、と考えている。
さらに、これらには申立代理人の弁護士も必要になる(地裁は法人の破産の申立ては弁護士を申立て代理人にしなければ受け付けてくれない)。この費用は難易度によるが[100万以上]はかかる(申立て前処理をしっかりやってくれる弁護士の場合は[150万円以上])。
なぜ申立て代理人の費用が高額なのか。
[法人の破産]では、結果としてその法人はなくなってしまうのだから、法人のなした契約をすべて解除しなければならない。
雇用契約、融資契約、賃貸契約、その他光熱水費の契約などすべての契約を解除しなければならないのだ。
ある弁護士に聞いたところ、破産管財人とのメールのやり取りは200-300通ほどかかる、と。依頼人とのメールのやり取りはその半分くらい、とおっしゃっていた。ことほどさように作業量が膨大にかかるからなのだろう。
しかも、依頼人の利益を少しでも守っていただけるような有能な弁護士でなければ、いくら費用をかけても弁護士の商売にされてしまうだけだ。
[私的処理の費用]
地裁に申し立てて破産管財人が介在する方法ではない[任意整理(私的整理)]については、[予納金]は必要ないが[弁護士費用]が過大にかかることになる。それは管財人の作業もすべて代行することになるのだから致し方ない。
事業経営者が倒産の事態を受け入れ、ちゃんとピリオドを打って再出発するためには、上のようにかなりの費用が掛かるのだ。
それまで毎年、何千万円も何億円もの事業をしていた事業経営者が、数百万円の倒産処理費用を前にたたらを踏む局面が訪れるのだ。
それは倒産処理を“甘く見ていた”からに他ならない。
でも、考えてみていただきたい。倒産処理のためには、
・社員の労働債権を保証し
-給与、(規定があれば)退職金、解雇予告手当、など
・会社の財産を換金し
-売掛金の回収、会社財産(不動産など)の売却、在庫品の換金、など
・債権者に連絡して債権調査を行い
-買掛先、借入債務から光熱水費まで
・可能ならば配当を実行し
-できなければ0%になるが
・会社のなした契約をすべて解除し
-賃貸契約やリース、ローンの契約も破棄する
・事業所の撤去を行い
-会社がなくなるので、会社の痕跡(看板、賃貸物件、各種届け出、など)もなくすことになる
・最終的には債権者の同意を取り付ける。
-裁判所での債権者集会で
これらをすべて行わなければならないのだ。
結果として、会社の借入債務や未払債務などのすべてがなくなって(わたしが見た限りでは最低でも一千万円、上は数億など切りがない)、債務のない状態で再起できるのだから、“安いものだ”ともいえるだろう。
それを、倒産の当事者である事業経営者がやることを考えれば、かなりの程度の費用が掛かることは納得できるというものだ。
今までたくさんの倒産処理を見てきたが、同じようなものはほとんどなく、その倒産処理は一社一社すべて違っていた。
当事務所ではカウントを始めてから1,000件を超える相談を受けてきました。
その経験から言えるのは、1000の倒産があれば、1000の処理があるのだということ。
そして、私共は常々“せめて半年早ければ”と言い続けている。
倒産には、【切迫倒産】と【予知倒産】がある。
【切迫倒産】とは
倒産とは、債権者を残して事業を停止すること。
その倒産に際して、
・時間がなく
・処理費用もなく
・次のステップへの準備もできていない
このような状態を【切迫倒産】と呼ぶ。
【予知倒産】とは
倒産とは、債権者を残して事業を停止すること。
その倒産に際して、
・時間敵に余裕があり
・処理費用もある程度あり
・次のステップへの準備もできている
このような状態を【予知倒産】と呼ぶ。
時間が早ければ、【予知倒産】の処理が可能になる。
・倒産処理資金の調達も容易になるし
・心理的心構えにも余裕が生まれる。
それができないと、【切迫倒産】になり、[放置逃亡]が起こるばかりか、事業経営者として立ち直れないほどのダメージを受けるのだ。
特に人間関係のケアにも影響が出てくる。家族、親類、知人、取引先、等々。辛い別れの場面を見て来たし、わたしも少なからず経験してきた。
わたし自身の倒産でそれを強く感じたので、後に続く人に同じ思いをしてほしくないのだが、お判りいただけるだろうか。
どうか、倒産処理を甘く見ないでいただきたい。
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